【長崎】島内に7社の焼酎蔵がある、麦焼酎発祥の壱岐。島にはかつて、清酒醸造の文化があり、いまもその文化を継承している蔵元がある。壱岐麦焼酎「壱岐っ娘(いきっこ)」の醸造元、壱岐焼酎協業組合(壱岐市芦辺町、篠崎修理事長)だ。醸され続けている清酒は「心意気」。造り手の杜氏、石橋福太郎さん(35)は今年6月18日、(財)日本醸造協会から“唎(きき)酒マイスター・清酒編”の称号を贈られ、造りの研さんにも一層の弾みがつきそうだ。「これからも、壱岐の清酒造りを絶やさないよう取り組んでいきたい」との言葉には、壱岐の島の酒の歴史をつなぐ“心意気”が籠る。
“唎酒マイスター”は、日本醸造協会が今年6月17、18の2日間の日程で開いた「実践唎酒セミナー・清酒編」(第20回)の参加者28人中、成績優良者3人に授与したもの。
セミナーでは講習後に、唎酒能力を高め評価対象とする9項目にわたる実習(①においの識別②アルコール度数の順位③日本酒度の順位④甘味の識別⑤酸味の識別⑥味の濃淡・甘辛の識別⑦香気特性の記憶と識別⑧タイプ別清酒の記憶と識別⑨特徴ある市販酒の唎酒)--が行われ、授与者を選んだ。
「セミナーで学んだことを生かし、清酒『心意気』の品質向上、製品管理に役立てていきたい」と語る石橋さんは、熊本工業大学で応用微生物学を専攻。他社で6年間、実業レベルで清酒造りを経験の後、同社に入社して以来、清酒醸造一筋に、現場で造りの技を磨いてきた。平成17酒造年度からは、「壱岐では造ったことがなかった」という吟醸酒の仕込みにも挑戦している。
「昔ながらの手造りで、洗米から搾りまで手作業が多い」という現場で、「常に初心を忘れないよう」、自らを戒める。仕込み期間中は蔵に張り付き、地道な仕事を重ねる。「気を引き締めて、朝昼晩と一日中、麹や醪と向かい合う」。
「ここ近年の日本酒離れ」は気がかりなことだが、「若い世代にも美味しく飲んでいただけるような、商品開発に取り組んでいきたい」と意欲を見せる。脚光を浴びる機会は少なくとも、一つの事を継ぐ気骨が確かに、そこにはある。