JA全農 酒造用原料米の複数年契約拡大へ

2018年02月21日

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は主食用米や原料米で導入されている米の複数年契約をさらに拡大させる方針だ。

 これまで酒造用原料米の生産は、単年ごとにJA側が需要を見込んで作付けを行い供給しており、需要と供給のミスマッチにより年度により不足と供給過剰を繰り返してきた。特に酒造好適米については、酒造用途での使用に限定されるため、JA全農は米の需要にもとづく安定生産、安定供給について日本酒造組合中央会や需要者との協議を続けてきた。

 28年6月に国が開催した日本酒原料米の安定取引に向けた情報交換会でも、今後、関係者が取り組むべき方策のひとつに複数年契約の拡大に向けた対応が掲げられている。また現在の米市場は、主食用米の値上がりが続いており、中食・外食向けの業務用米の不足も深刻。さらに国による飼料用米への手厚い政策支援や輸出用米の拡大目標(10万t)などもあるなかで、米による転作も多様化しており「加工用米の確保はより困難となる」との見方は多い。

 こうしたなか、JA全農は「需要に応じた生産をすすめていく」方針を示しており、2年ほど前から取り組みを始めた酒造好適米の複数年契約をさらに拡大することで安定的な供給を続けていきたい考えだ。

 複数年契約はJA全農(県本部)等と各酒造組合(連合会)で3年間の契約を基本として締結。毎年3月末までに3か年分の申し込みを行う。既に全農では酒造好適米の販売計画に占める2~3割程度で複数年契約が実施されているが、平成30年産米からはその取り組みをさらに拡大し、8割程度にまで高めていきたいとしている。

 JA全農米穀部原材料課では、「実需者から要望の大きい業務用米や転作による飼料用米への生産に切り替える農家が増えている。稲作農家の高齢化も深刻で、中山間地で作られる酒造好適米についても今後、不足も懸念される。酒造用米の安定した取り引きを継続していくためにも単なる価格要望だけでなくお互いが歩み寄った形で将来にわたって取り引きを続けていけるようウィン―ウィンの関係を築いていければと思っている」とし、今後、JA全農県本部を通じて各都道府県酒造組合(連合会)に複数年契約の申し込みを呼びかけていくという。

 平成29年産酒造好適米の検査数量は約10万3000tとなり、昨年を4000t程度下回る見込み。加工用米は28万4000tで昨年を6000t程度上回る見込みだが、加工用もち米の増産によるもの。JA全農によると、いずれも酒造側が求める希望数量は最優先で確保するという。