全国小売酒販組合中央会 平成29年度 「酒税制度等に関する要望書」

2016年09月26日

 全国小売酒販組合中央会は平成29年度の「酒税制度等に関する要望書」をまとめ財務省、自民党などへ提出した。平成29年度の要望は、酒税法、酒類業組合法の改正法に基づくものとなり、「実効性のある告示」や「組合加入の義務化」などを盛り込む4項目での要望となった。

 同中央会の平成29年度の「酒税制度等に関する要望書」では今年5月27日に可決成立した「酒税法および酒税の保全および酒類業組合等に関する法律の一部を改正する法律案」を意識したものとなり、特に改正法について「実効性のある『公正な取引の基準』が策定されるとともに、酒類小売業界が抱える諸問題の解決に向けた実効性のある告示がされるように」と要望した。

 小売業界の要望項目は①特殊性を有する酒類の公正取引等について②酒類小売業免許の見直し等について③酒類の適正な販売管理の確保に対する取り組みについて④公益的活動を行う小売酒販組合への加入義務化等について――の4項目となる。

 「特殊性を有する酒類の公正取引等について」は、「酒類の小売業免許の規制緩和以降、酒類の特殊性に対する規範意識を問われることの少ないままに小売販売ができるようになった結果、酒類の公正取引環境は大きく乱れ、過当な廉売競争が起こり、未成年者飲酒問題や飲酒運転問題、健康障害などが引き起こされている」と指摘。酒類の適切な公正取引環境、飲酒環境を整備することは「国民が健康で文化的な生活を送るうえで極めて重要」とし、〝安く酔える〟ことは真の消費者利益ではない、と訴えた。そのうえで、酒税法および酒類業組合法の改正法は「酒類小売業界が抱える問題を根本的に解決し得る法律であると、地域に根差し地域を支えている全国の酒販店5万5000軒からなる小売酒販組合員は強く期待している」とし、改正法の告示がなされる際には、法案の成立経緯に鑑み、中央会の意見を十分にくみ取った実効性のある公正な取り引きの基準が策定され、告示がなされるよう要望した。

 また、ビール系飲料に対する基本税率の一本化についてを要望。要望書の中で同中央会は、「ビール系飲料は特に激しい価格競争にさらされており、清涼飲料水並あるいはそれ以下の価格で販売されることも多くあるので、未成年者にとって魅力的かつ手近な商品としてゲートウエイドラッグになることも危惧されている。また大量飲酒者にとっても安価な酒類は魅力的にうつり、健康を度外視した不適切な飲酒を誘因することにつながっている」とし、平成25年に成立した「アルコール健康障害対策基本法」にも基づき、酒税法上のビール、発泡酒、新ジャンルの区分を廃止し、すべて「ビール」に統一するとともに、ビールの基本税率を現行通り22万円/klとするよう、要望した。

 「酒類小売業免許の見直し等について」では、一般酒類小売業免許では対面販売を原則とし、酒類の販売に際しては身分証明書の確認によるしっかりとした年齢確認の徹底が求められ、未成年者に酒類を販売した場合は50万円以下の罰金刑に処され、酒類小売業免許の取り消しとなるが、インターネットなどによる酒類の通信販売は対面販売を原則としないことから、「一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許との整合性の確保」を求めた。また、人口に比べて販売場過多である現状は「購入アクセスの容易化を過剰に進め、未成年者飲酒問題や飲酒運転問題といった諸問題の一因になっている」とし、酒類の社会的管理と行き過ぎた規制緩和を軌道修正する必要から、新規の免許申請に対しては「地域人口や地域事業者数等地域事情を勘案し、所轄税務署長の判断等により酒類小売業者の適正配置がされるように」と要望した。

 「酒類の適正な販売管理の確保に対する取り組みについて」は、消費者自ら商品の清算を行い酒類を購入することもできる無人レジの使用禁止を要望。無人レジによっては酒類を購入する際に店舗販売員を呼ぶなどの仕組みがある場合もあるが、「一般酒類小売業免許は対面販売を原則としており、また未成年者飲酒問題や飲酒運転撲滅の観点からも、そのときだけ店舗販売員が確認する無人レジは、通常の対面販売と比べてその実効性に疑問があるのは明らか」とし、無人レジの使用の禁止を求めた。また、外税表示と総額表示の事業者による選択制を求めたほか、酒類販売協力員制度の運用について小売酒販組合活用も求めた。

 「公益的活動を行う小売酒販組合への加入義務化等について」は、小売酒販組合は地域に根差した中小零細の組合員5万5000軒で組織されており、規制緩和後の新規参入業者の加入は進んでいないのが現状で、「平成26年6月に全会一致で採択された国会請願に基づき、積極的に組合未加入の酒類小売業者に対する小売酒販組合の組織率向上策を検討実施してもらいたい」とするとともに、すべての酒類小売業者が求められる社会的責務に対応し、ひいては酒類業の健全な発達に寄与し地域社会の発展に資するためにも酒類業組合法を改正し、「小売酒販組合への加入義務化」を要望した。