大阪酒販年金訴訟原告勝訴の判決 小売中央会に賠償命じる

2011年07月28日

 【大阪】関西地区を中心とする酒販年金事件の被害者65人が、全国小売酒販組合中央会、クレディスイス銀行、当時の小売中央会役員、年金事件発生時の中央会事務局長・関秀雄受刑者、小売中央会にチャンセリー債投資を持ちかけたブローカーの砂古健被告ら20者に対して、無謀な投資による損害の賠償を求めた訴訟の判決が7月25日、大阪地方裁判所であった。大阪地裁は、小売中央会、関秀雄被告、砂古健被告、当時の小売中央会専務理事の吉竹脩男被告の4者に、弁護士費用を含めた1億7518万6645円の支払いを命じる判決を下した。

 判決内容について、同地裁は「関被告は理事会に諮らず、自己の利益のために中央会印を勝手に使用し、チャンセリー債に投資した責任は重い」として投資の責任を認め、小売中央会に対しても「関被告の不法行為に対する監督責任はある」として損害の賠償を認めた。元専務理事の吉竹被告に対しても、「チャンセリー債への投資について、もっと真剣に検討すべきだったが、投資内容を精査せず、関による投資を許したことは、関と共同不法行為にあたる」として責任を認定。砂古被告に対しても「チャンセリー債の基本的事項を全く説明することなく、できる限り多くの金額を投資させようとした」として賠償責任を認めた。

 クレディスイス銀行および当時の同行香港支店の日下部治郎被告に対しては「既に関被告が投資を決断した後で、あくまで代行事務手続きを行っただけだ」として責任を認めず、吉竹被告を除く幸田昌一会長はじめ、当時の小売中央会役員に対しても「組合法により、第三者責任はない」として賠償の必要はないとした。藤田利久被告をはじめとする当時の中央会年金委員に対しても「委員会の開催権限すら持たず、専門的に年金の作業を行うことはなかった」として「賠償の必要はない」とした。

 今回、賠償責任があるとされた4者に対しては、平成14年12月から年5%の金利を上乗せしての賠償金の支払いが求められることになる。今回の判決について、原告側弁護団の三木俊博弁護士は「小売中央会に賠償責任があるとの判断が出たことで、被害回復につながる可能性が出てきた勝訴判決だといえる」と述べるとともに、クレディスイス銀行に賠償責任無しと判断したことに対し「あくまでも事務代行に過ぎず、賠償責任はないとした判決は誤りであり、間違った判断の不当判決だ」とした。

 この判決を受けて、小売中央会は「まだ正式な文書が届いていないので、コメントは差し控えたい」とコメントしている。