福岡中央酒販協同組合 講師は同業の専門店

2009年09月29日

 【福岡】福岡中央酒販協同組合(158者、浅川吉允理事長=福岡小売酒販組合理事長)は9月13日、福岡市中央区赤坂の組合会館で、「きき酒研修会」を開催した。日本酒のきき酒を実習し、講義を通じ日本酒販売のヒントを見いだしてもらおうと企画したもので、初。講師には、地酒専門店として先駆の同業者、石橋幸二氏(「石橋酒店」=福岡市中央区六本松)を招き、業界動向など商売につながる生の情報も得た。

 研修会には同地域以外からの参加者もあり、約30人が参集。講義に先立ち参加者は、5種類の市販酒をきき当てる、きき酒に臨んだ。揃えた酒は普通酒、本醸造酒、純米酒、純米原酒、大吟醸酒。タイプは違えど、微妙な違いに参加者は悪戦苦闘した。

 講義ではまず石橋氏が、きき酒の成績を発表。全問正解は一人だけで、1種も当たらない人もあり、総じて成績が悪かったことが伝えられた。そこで、それぞれのタイプについて特徴を説明し、見分け方のヒント、きき酒の仕方を指南したところで、再度きき酒に挑戦してもらうと、成績は格段に向上した。きき酒の力をつけるには、毎日の積み重ねだ、とも。だれもが知る銘酒の味を覚え込み、その味を基準に他酒の特徴を比較し整理記憶していく方法も教えた。

 きき酒能力を磨くのは、きき酒競技に勝つためではない。「お客さんに、どのお酒を勧めれば喜んでもらえるのか分かるようになる」。実際、お客さんの顔を思い浮かべ仕入れをするという石橋さん。得意先によって、例えばおでん屋、焼鳥屋、寿司屋などそれぞれに、「合う酒」は異なる。「銘柄を揃えるだけではダメ。むしろ料理学校に行って、どんな料理に合うのか、そして料理屋を指導できるぐらい、料理の事を勉強した方がいい」。これまでに「酒を売ろうと思ったことはないし、営業活動もやったことがない」。「飲み屋が繁盛するよう仕掛けてきた」のだという。さらに石橋さんの話は、全国のさまざまな蔵元、酒販店の取り組みや、個々の商品の背景にあるものにまで及んだ。

 研修会には青年会長や、福岡空港国際線で日本酒を販売する担当者も参加した。酒の情報誌「月刊ビミー」を発刊するヤングマーケティング研究所(東京都=日本酒のPRセンター「名酒センター」運営)の浜崎正之さんも駆け付け、販促活動を展開する日本酒をアピール。純米原酒系の日本酒を炭酸水で割る“侍(さむらい)ハイボール”なる飲み方も提案した。

 組合の浅川理事長は、石橋さんに講師を依頼した理由について、「勉強家の大家。専門家であり、何よりも同じ目線でのお話が聞きたかったから」だという。

 石橋さん(75)の酒屋人生は58年。地酒専門店の先駆けで蔵元や同業専門店からの信頼も厚い。研修会では参加者を励ますように語った。「酒屋は20億も30億も売らなくていい。装置産業の安く売るやり方ではなく、やりようはいくらでもある。やりようによってはまだまだ前途有望だ」。