月桂冠総合研究所 麹菌による大量生産技術を確立

2012年04月05日

 月桂冠総合研究所は、麹菌の作るぺプチドの一種、デフェリフェリクリシンを大量生産する技術の開発に世界で初めて成功した。

 デフェリフェリクリシンは、抗炎症・抗酸化、美白作用があり、また、デフェリフェリクリシンと鉄との結合で生じるフェリクリシンには、貧血の改善・予防のほか、持久力向上などの機能性があることも確認した。デフェリフェリクリシンの大量生産が可能になったことで、今後、医薬品や機能性食品、化粧品の素材など、幅広い用途への活用が期待される。

 麹菌が作るデフェリフェリクリシンは、鉄イオンを包み込むようにして結合するキレート作用により、フェリクリシンを生じ、清酒を赤橙色に着色させることがある。このため、清酒醸造にはできるだけ鉄を持ち込まないことが原則とされてきた。

 一方で、鉄イオンとのみ選択的に結合する性質は、他分野においては有用な用途となるが、これまで通常の培養方法では大量生産は困難であるとされてきた。

 そこで同研究所はデフェリフェリクリシンを多く生産し、同時に鉄への感受性が低い麹菌株を育種。培養方法にも撹拌を強めるなど、独自の技術を導入し、生産性を従来よりも1000倍に向上した。

 デフェリフェリクリシンとフェリクリシンは、医薬品・食品・化粧品などに機能性を付与するための素材として、応用が可能とされている。デフェリフェリクリシンには、マウスを使った実験によって抗炎症・抗酸化効果によって消化器疾患の改善や、美白に関係する抗酸化活性とメラニン抑制効果を有することが確認されている。

 また、フェリクリシンには、鉄の供給剤として貧血予防食品や貧血症の医薬品に利用される可能性が考えられており、今後応用分野を広げていくために、さまざまな機会を通じて提案していく。