ビール各社被害状況 東北各工場で復旧目途立たず

2011年03月28日

 東日本大震災で大きな被害を受けた東北のビール工場では今もなお、製造開始の目途が立たない状況が続いている。

 アサヒビールは福島工場で地震の被害が大きく復旧の目途が立たない状況。茨城工場は3月22日から「スーパードライ」の一部品種から製造を開始した。神奈川工場は3月18日から20日まで計画停電の影響を受け操業を中止。21日以降も計画停電の影響で仕込み工程は中止し、パッケージングを中心に操業している。

 キリンビールは仙台工場でビール貯蔵タンク4基が倒壊、津波によるビール流出など被害が大きく操業を停止。復旧の目途は立っていない。また、取手工場でも建物の一部が損壊するなど被害があり製造は停止中。3月17日から横浜工場や名古屋工場から商品を転送し、関東エリアへの出荷を一部再開した。また、横浜工場は計画停電が予定されていることから可能な範囲で稼動を行っている状況。横浜工場は大型の自家発電設備(最大発電能力=1万kw=一般家庭およそ3300軒分)を有していることから、工場が生産に使用する電力以上の発電を行うことで東京電力に電力を供給することが可能。「電力不足の状況において少しでも電力確保に貢献したい」とする。

 サッポロビールは仙台工場が地震の影響で設備や倉庫の被害が大きく、製造・出荷再開の時期は未定。千葉工場は敷地内で液状化や陥没が見られ現在補修中。製造設備自体に大きな損傷はないため早期復旧に向け作業が行われている。那須工場は先週から製造を開始している。

 東北のビール工場が大きな被害を受けた3社は、新商品の発売を相次いで延期や中止とする一方、被害を受けなかった工場での主力ブランドの増産が始まっている。

 アサヒビールは4月5日から発売を予定していた新ジャンル「アサヒ ブルーラベル」の発売延期を決めたほか、8商品で発売中止や延期を発表。被害を受けなかった6工場では「スーパードライ」「クリアアサヒ」を中心に24時間体制で増産を開始している。キリンビールは4月20日から発売予定だったRTD「氷結」の新シリーズ「キリンチューハイ 氷結やさしい果実の3%」の「ふわっと香るピンクグレープフルーツ」と「ふわっと香る赤ぶどう」の発売を一時中止することを決めた。サッポロビールは3月23日から発売予定だった「トライアングル ジンジャーハイボール」が千葉工場内の製品倉庫で被害を受けたため発売を延期。また、「サッポロ生ビール黒ラベル 静岡工場できたて出荷缶」「同千葉ロッテマリーンズ応援缶」「サッポロ 麦とホップ がんばれ清水エスパルス缶」「同がんばれジュビロ磐田缶」の発売をそれぞれ延期し、既存ブランドの供給を最優先する。また、サントリーでも4月5日に発売予定だった新ジャンルの新商品「絹の贅沢」の発売を延期した。

 飲料メーカーは、政府や自治体などの要請でミネラルウォーターを中心に被災地への救援物資として出荷を最優先するよう協力を依頼をされていることから、各社フル稼働で生産している。

 アサヒ飲料は六甲工場と明石工場で、水とお茶を最優先して製造している。サッポロ飲料は新商品の発売を延期しミネラルウォーターの製造を最優先する生産計画に変更し、資材調達の準備を始めた。3月の国産ミネラルウォーターは3月23日現在で前年比8割増で推移しており引き続いて安定供給につとめる。