【熊本】地元熊本の清酒を純然と愛し愉しむ。「熊本の酒の会」は昭和59年12月14日に初開催。奇しくも赤穂浪士討入りと同日。以来、郷土が誇る酒が他県酒に押される状況に危機感を抱き、愛飲の和を深めてきた。その志、浪士の熱情にも似て、熊本の酒愛飲の火を燃やし続けている。
元々は、熊本の新聞社や放送局の代表、学者や作家の4人で発起。現代表世話人の小堀富夫さん(熊本放送名誉会長・常任相談役)はその一人だ。当時は、灘・伏見の大手メーカーの清酒がどんどん入ってきていたと振り返る。「それでも熊本の酒は頑張っていた。だから、熊本の酒を飲む会をつくろう」と気勢も上がった。
年2、3回開かれる会は、誰でもが参加できるものではない。約250人の会員にのみ開催案内がされ、その会員と熊本酒造組合加盟の蔵元、それに会員や蔵元が紹介するゲストが加わる。毎回の参加者は100人程度になる。
会員にはマスコミや金融、ホテルや料亭、大学の関係者らが名を連ねるが、「名前だけエライ人の参加は認めない」(小堀さん)。何よりも「熊本の酒が好きなこと」が絶対条件だ。会の運営もいたってシンプル。挨拶に時間を割くこともなく、2時間ほど、ただひたすら料理と共に酒を酌む。特定の酒を売り込んだり、取引に繋げるようなビジネスめいたものも無い。
12月1日には、熊本市の熊本ホテルキャッスルで第49回の会が催された。1万円の会費制。参加者は会員59人、蔵元7人、ゲスト17人の計83人だった。料理は、前菜(蟹このわた黄身酢かけ・唐墨紅葉大根など)から、造り、蓋物(鰤大根)、焼物(甘鯛うに錦糸焼き)、替り鉢(牛タン山椒焼き味噌クリーム)、酢の物(河豚柚子酢味噌かけ、炙り菊花帆立貝柱)、留椀、御飯(鯖ずし)、水物(甘酒アイスクリーム)まで品格の献立。
初回から参加しているという女性は「毎回本当に美味しくて素晴らしい料理が楽しみ」と満面の笑みをこぼす。お酒も大好きで、それも吟醸酒ではなく普通酒を好み嗜むという。その人の暮らしに、熊本の酒が潤いを与えている。
お酒は、香露・瑞鷹・美少年・通潤・花の香・千代の園・れいざん・蓬萊・和田志ら露・亀萬--と熊本が誇る県産全10蔵の酒。普通酒を好みで燗付けして愉しんだり、吟醸とか純米をチビリと飲(や)る人たちに囲まれて、酒も幸せ色に染まっていくように見えた。