清酒、焼酎、ビール、清涼飲料水などのびん製品に、絶対に必要な王冠。ビールや清涼飲料水などに使われている単式王冠、清酒や焼酎の一升びんに使われている複式王冠(クラシック王冠)、4合びんなどに使用されているスクリューキャップと、そのスタイルはさまざまだが、そこに施されているデザインは、どれも個性あふれるものばかりで、ラベルとともにしっかりと商品をPRする一翼を担っている。
現在、王冠の印刷に使用されているのは、「デジタル・デザイン」「フィルム製版」が主流だが、こうした印刷方法が主流となったのは、1980年代後半からのことで、それまでは、専門技能をもった職人が、一つひとつ銅版に手作業で銘柄を彫って原版として使用されていた。その精緻なデザインは、とても手作業で彫られたものとは思えないほど。当時の職人たちの高い技術レベルが伝わってくる。
王冠製造メーカーの老舗、きた産業(大阪市生野区桃谷、喜多常夫社長)には、こうした王冠印刷の原版となっていた1930年代から1980年代までの貴重な銅版、約5000枚が保存されており、今回その一部を「お酒王冠・銅版ミュージアム(MUSEO SAKE FUTA)」という形のWeb博物館で公開に踏み切った。
現在、全国の清酒メーカー数は1千数百社にまで減少しているが、1980年代には3000社近く、1950年代には3700社、そして戦前の1930年代には7000社以上のメーカーが存在した。同社が保存していた銅版の中には、既に廃業したメーカーのものが、約半数含まれており、公開するにあたっては、こうした既に存在しないメーカーが、どこにあったのかを調査するなど、細かい作業にも多くの時間を必要とした。
現在、「お酒王冠・銅版ミュージアム(MUSEO SAKE FUTA)」で公開されているのは、このうちの一部である約500枚。「月桂冠」「菊正宗」「松竹梅」「大関」など、主産地大手メーカーの戦前や昭和30年代のものから、「高清水」「初孫」「真澄」「金陵」「土佐鶴」などの地方有力メーカー、そして既に廃業してしまったメーカーのものまで、公開されている銅版は多岐に及ぶ。銅版に一つひとつ手彫りで彫られているデザインは、いずれも王冠の原寸であり、その細かく精緻な作業からは、当時の職人たちの高い技術レベルが伝わってくる。
喜多社長は「整理が終わって公開できたのは、まだ一部に過ぎないが、今後は残っている資料も順次公開していきたい。こうした貴重な資料を通じて、日本の酒造業の歴史を記録する一つの切り口になっていけばと考えている」と今後もこうした文化の発掘に力を入れていく考えだ。
「お酒王冠・銅版ミュージアム(MUSEO SAKE FUTA)」は、http;//www.kitasangyo.com/museo/museo.htmlから。