【福岡】「日本酒を日本文化として世界に広めたい。そのために酒友100万人をつくり、日本酒需要の底上げをしたい」――。日本酒の魅力を多くの人に伝えたい。そんな思いを募らせて、福岡市在住の松本久加子(まつもと・くがこ)さんが、“日本酒コーディネーター”の道を歩みはじめた。
実現へ向け立ち上げた会社が「JOY OF SAKE COMPANY」。日本酒スクールを開講したり、意外な組み合わせで日本酒を楽しむイベントを企画したり。「ハワイに『カクウチ』をつくりたい」とも。カクウチ=角打ちは、立ち呑みで酒を酌む粋なスタイル。日本人観光客へアプローチし、日本酒の価値を逆輸入する、そんな構想も抱く。
6月8日、福岡市内のホテルで開かれた会社設立を祝うパーティーは、120人の来場でごった返した。福岡や佐賀、大分の約20の日本酒蔵、松本さんが所属していた「お酒の学校」や「佐蔵会」の関係者も駆けつけた。
松本さんは、福岡県酒造組合が開校するお酒の学校の2期生。また佐賀県酒造組合が催す佐蔵会の4期生でもある。ともに、酒造組合が情報誌と共同で企画・運営する、日本酒啓もうの学び舎。知識を習得するだけではなく、その魅力を体感し、日本酒の魅力にとりつかれた。2005年から2年間は、福岡国税局が委嘱する酒モニターとして、日本酒の需要開発という課題に向き合った。
これまで10年間、ワイン関連の業種で勤務してきたが一念発起。日本酒の素晴らしさを、どうして分かってもらえないのか。悶々として吹っ切れない壁にぶつかり、突破口を見いだすため、「着地点がほしかった」という。
日本文化の粋、着物と同じ。その良さを日本人こそが知らない。日本酒の魅力をいかに伝えるか。日本酒への門戸をいかに開くか。そのための試行を重ね、自身が魅せられた、日本酒がある暮らしの豊かさや幸せを共有する酒友の輪を、いかに広げるか。
パーティーでは、起業への気持ちを込めた日本酒、特別純米酒「久加∞(くが)」(醸造元・小松酒造場=大分県宇佐市)を披露した。蔵元杜氏の小松潤平さんは、松本さんが泊りがけで一緒に仕込んだ酒だと説明。松本さんが描く酒質は独特だ。「食中酒として、ワインのような心地いい飲み口と、ビールやコーヒーのようないい意味での苦味を目指した」。酒名にある“∞”には「無限に酒友が広がってほしい」との思いが込められている。「日本酒用のかわいいバッグがない」との声に応え、風呂敷をモチーフにしたSAKEバッグも開発した。
火災被害に遭った旭菊酒造(福岡県久留米市三潴町)の復興を願い、義捐金を募った松本さん。酒販免許は取得せず、酒の販売は起業の主旨に賛同する酒販店、福岡市の住吉酒販、とどろき酒店などが担う。
会社では今後、6月下旬に福岡市でSAKEスクールを開校するほか、同市で酒会(7月16日「日本酒と線香花火と浴衣の会」、8月8日「日本酒とボサノヴァの会」など)開催を予定。商品開発や販促に関するコンサルタントにとどまらず、酒友づくりへ希望は膨らむ。「蔵元さんを紹介する番組をつくりたい」「お酒を飲みながら作る、おつまみの本を出版したい」…。
何もかも手探りで、迷いや不安も隠さない。そんな松本さんを酒友が支える。夢が支える。
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