月桂冠は共同研究により、清酒麹菌を活用して抗エイズウイルス作用のあるペプチドのバイオ合成に成功。生産効率向上など実用化に向けた研究の成果を、3月28日に東京大学駒場キャンバスで開催された「日本農芸化学会」2010年度大会で発表した。
この研究は、科学技術振興機構(JST)の平成18年度育成研究課題「ペプチド性新興・再興ウイルス膜融合阻害剤の大量生産法の確立と創薬展開」により、京都大学大学院薬学研究科など3機関と、月桂冠総合研究所が共同研究を行った成果。月桂冠は、これまで麹菌を用いて有用なタンパク質やペプチドを生産させる技術を開発してきたが、この研究では京都大学大学院薬学研究科が、HIVの増殖を効率的に阻害するペプチドの分子配列を人工的にデザイン。月桂冠は、このペプチドに対応する遺伝子を麹菌に組み込み、抗HIV作用のあるペプチドをバイオ合成し、その生産効率を向上させる研究を行った。
同様のペプチドを化学合成する場合、生産の過程で発生する不純物の除去などで工程が複雑になり、生成する量も限られる。バイオ合成の場合は、微生物により物質を作らせることから、化学合成の10分の1から100分の1の低コストでの生産が可能。この研究成果を実用化できれば、新たな治療薬としてHIV感染が深刻な国々に低コストで抗HIV薬剤を供給することも期待できる。
さらにバイオ合成に成功したペプチドは、既存のペプチド薬剤に対して耐性を持つようになった、HIVにも作用する。また、HIVと類似のメカニズムで、ヒトや動物に疾病を引き起こす新興ウイルスに対しても、ペプチドの配列を変えることで、この技術を応用できる。同社は、この研究成果を技術移転し、実用に供すべく、現在JSTを中心に連携先を検討している。