酒類総合研究所政府事業仕分けで 必要性を“了”と判断

 独立行政法人酒類総合研究所が政府・行政刷新会議の「事業仕分け」の対象となった。酒類総合研究所の平松順一理事長らが研究所の業務内容などを説明するとともに、政治家や有識者らで構成された〝仕分け人〟からの質問に答えた。枝野衆議院委員は、酒類総研の必要性については〝了〟としたが、「役割を整理した上で、民間実施が可能な事業は共同化や業務委託を推進する」とし、見直しの必要があると取りまとめた。

 行政刷新会議で「事業仕分け」の対象事業となっていた独立行政法人酒類総合研究所(以下・酒類総研)の運営費交付金について、11月27日、仕分け作業が行われた。

 仕分け作業の冒頭、財務省主計局から「国が行う成分分析のうち、酒類の容器から溶出する可能性がある有害物質の分析など民間の方が効率的なものは委託する。研究課題も研究の利益が国にどれ位あるのか、民間にどれ位あるのか、受益者負担についても十分に考えていく必要がある。また、講習会、鑑評会も共催化を推進しているが、負担の水準はどれ位あるのか。鑑評会は歴史的にも有名だが、国の交付金の減額ということで、財政状況が厳しいので、少しでも自己収入を図るという観点から議論していただきたい」と見直しの方向性が述べられた。

 仕分け作業では、酒類総研の事業目的が、「国税庁の行政目的である『酒税の適正かつ公平な賦課』および『酒類業の健全な発達』を達成するための組織」と説明され、今回、出された予算(11億1400万円)は「この目的を達成するために中期計画に従って『酒類に関する高度な分析および鑑定』『酒類および酒類業に関する研究、調査および情報提供』などの業務を適切に実施する上で必要な経費」であると説明。これについて、仕分け人から、「酒税の保全のため、酒類の分析・鑑定が必要か分からない」「徴税と業務の関連性がより強化される方向に業務を重点化すべきである」などの意見が相次ぎ、「研究所の役割をより明確にする必要がある」「研究内容と存在目的が一致していない。基本的な見直しが必要」と厳しい指摘がなされた。

 さらに「他の政府研究機関との整理統合を検討すべき」「他の食品安全の検査なども考え、組織の見直しを行うべき」と他の研究機関との統合についても検討が必要と言う意見や、事業予算については「中期ではなく短期に5%縮減」「削減目標は5年単位で設ける」と民間レベルから見た削減案も示された。

 一方で、「受益者負担については、国産の酒(日本酒など)は、産業保護育成に向けた技術的支援を行うことは重要」と、見直しについて〝慎重〟とする声も挙がった。

 最終的な意見のとりまとめを行った枝野幸男衆議院委員は、「酒類総研の、その必要性は〝了〟とするが、その役割をもう少し整理し、ここでやらなければならないこと、やらなくても良いこと、やらなければならないことはその根拠、理由をしっかりと整理し、民間実施が可能な事業は、共同化や業務委託を推進する」と結論付けた。

 事業仕分け終了後、酒類総研の平松順一理事長は本紙取材に対し、「酒類総研の必要性について〝了〟としてもらえ、一先ずホッとしている。1時間という限られた時間の中で高度な研究内容などを説明するのは難しい。指摘された点について、すぐに実行できることについては実行していきたい」と述べた。

 仕分け人からの質問と酒類総研側の説明については要旨、次のとおり。(酒類総研側の説明の中には一部、担当省庁として出席した国税庁からの説明も含まれている)

 仕分け人「昔は税収の確保だけでよかったが、現在は産業育成的部分がある。保護、育成しなければいけないがその割合、比率はどれ位あるのか」

 酒類総研「酒税収入はウエイトが下がったものの貴重な財政物資で、引き続き適正、公平な課税を行う必要がある。その関連で分析、鑑定、さらにその裏づけとなる基礎的、基盤的研究というものを酒類総研でしている。最終的に本来国でやらなければいけない業務に資するものの研究の相当の部分を占めている。安全性確保の研究も相当部分を占めており、他方、中小企業向けの基盤的サポートとなるような研究にもなっている。分析、鑑定に資する商業ベースではやらないような基礎的研究テーマで研究を行い、通常民間の採算ベースで行うようなものは研究していない」

 仕分け人「検査の部分を民間に委ねて、基礎的研究だけをやるという考えはないのか」

 酒類総研「既に課税を適正に行うための分析、鑑定の高度な部分の研究を行っている」

 仕分け人「成分を明らかにして、税の不公平な課税をなくすということか」

 酒類総研「酒の製造方法とか、成分によって適正に担保するための必要な業務を研究分析でやっている。関連して、通常酒屋から分析依頼があっても、民間を紹介している。基本的には、ここでしか出来ない高度なものに限ってやる」

 仕分け人「国のきちんとした検査機関は持っているべきだと思う。民間に任せるべきだという議論はあるが、かならずしもそれが良いとは思わない。仮に民間ができたとしても、きちんと報告しない可能性もある。酒類総研から見てどの部分なら民間に任すことができるのか」

 酒類総研「分析の民間委託は民間で実施した方が効率的というものについてはできるだけ民間に委託していこうという考え方になっている。適正、公平な課税のため分析、鑑定など、中立公平が強く求められる部分については引き続き酒類総研で実施する方が適当だ」

 仕分け人「具体的研究テーマと酒税の関わりが薄いのではないか」

 酒類総研「酒税には良い酒を提供するという義務があり、そのために研究をしている」

 仕分け人「研究は必要だと思うが、酒税を守る為に用意されているお金でやる研究がどうか。良い酒を提供することは国税庁に課されたことではないのではないか」

 酒類総研「国税庁の任務の一つに酒類業の健全な発達がある。良い酒を提供するのは適正な酒税を課す我々の任務だと考えている」

 仕分け人「日本の酒蔵のほとんどは、中小どころか零細企業である。そういうところを技術的な面でしっかりと支えていくためにやっているのだと思う。だとするなら11億円という非常に少ない金額でやっているという評価もできるが、どうもそうではないと一生懸命言っている。そうではないなら、酒税の確保のためには余計なこと。『研究所の主たる目的は日本は零細の蔵がほとんどだからそこを支援している』とは言えないのか」

 酒類総研「決して言えないのではない。酒税の適正、公平な賦課に合わせて、酒類業の健全な発達を図ると言う両方が国税庁の任務であり、それを受けて酒類総研が技術的サポートをしている」

 仕分け人「中小零細の酒蔵を育成するということが書いていないから言えないのか。大手ビールメーカーも含め、大手企業を支援する必要は少ない。そういうところが基本的なターゲットになっているのか」  酒類総研「基本的にはそういう理解(零細製造蔵の支援)で結構である」

 仕分け人「研究とは新たな発見とか、知見を生み出していくことだと思うが、分析とか鑑定とか、単なる分析機関になっているような気がする。しかし、研究機関らしいところもある。もう少し整理した方がいいのではないか」

 酒類総研「鑑定、分析の研究もしているが、それだけでは十分な結果は得られない。抜本的な研究がどうしても必要になってくる。その底辺の研究をして、分析、鑑定に生かすと同時に、情報、知見がいろいろ出てくるので、こういう知見は学界で発表し、特許を取るなどしている」

 仕分け人「事故米の時に物質にアブラトキシンなどが出たが、そういう物質を分析できる民間の研究機関というのは足りているのか」

 酒類総研「当時は、十分になかったと思う。緊急性を要し、かつ分析の精度、方法を短期間で行う必要があった。われわれは酒類の安全、安心という観点で有害物質の分析、鑑定を従来から研究しており、その成果があの時に役立った」

(掲載日:2009年12月04日)

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