【鹿児島】試験栽培の長粒米9品種の籾(もみ)を確保--。10月22日、曽於市財部町新田地区の田んぼで、稲の脱穀、“稲扱(こ)ぎ”が行われた。コメは、芋焼酎の麹用原料米として使用するため、今春初めて栽培に着手した長粒インディカ米。今後、検査研究機関によって生育状況や収量、栽培適性がまとめられ、試験醸造も行われる予定。実用化の活動を推進するNPO法人の立ち上げも検討されている。
試験栽培を働きかけたのは、県内で酒類流通業に携わる前畑浩一さん。同地区の農家・川添光博さんが要請に応え、今年6月18日に田植え。焼酎の蔵元3社をはじめ、曽於市の行政関係者や市議、栽培指導員、同様の構想を抱く指宿市の市議なども立ち会った。さかのぼる1月、前畑さんは「長粒米栽培研究会」を立ち上げ、曽於市・池田孝市長に対し、「焼酎用長粒米栽培計画へのご支援について」と題する要望書を提出。市長が支援を表明し、鹿児島県知事とも接見。県農政も協力する形で試験栽培の下地をつくってきた。
栽培田は5畝ほどで、そこへ▽タカナリ(関東146号)▽ハバタキ(北陸129号)▽ホシユタカ(中国96号)▽北陸218号▽夢十色(北陸142号)▽北陸193号▽ch86▽タチアオバ▽ニシアオバ--の9品種を植え付けた。
9月には生育状態を見る現地検討会を実施。開花時期や稈長など明確な相違があった。9品種すべてを10月3日、同月13日に刈り入れ、掛け干しで天日乾燥させてきた。
脱穀は旧型の機械で品種が混ざらないように慎重に行われた。仕事を終え、川添さんは「すべて籾(もみ)にまで仕上がって安心した」と語った。前畑さんは、「焼酎に一歩近づいたような気もするが、自信はなく楽しみだけ」と不安もにじませた。活動が折れないよう、関係者の参加を促すNPO法人の立ち上げ構想も抱く。
焼酎原料用の長粒米栽培の試みは、県内の早場米栽培地区では行われているが、同地のような普通期米栽培地区では例がない。今後は、栽培のし易さや収量、農家の手取収入、醸造適性などを総合的に加味し、品種を選抜。3年をメドに実用化を目指す。
前畑さんは、国産米での麹造りを模索し、栽培が途絶えていた白玉米を復活させた。そのコメを麹に使った芋焼酎が「侍士の門」だ。
これまで芋焼酎の麹用原料米としてはミニマムアクセス米(MA米)のタイ産長粒米などが使われてきた。インディカ米が酒質に与える影響は大きく、焼酎製造者の間には使用を継続したいとの声もある。今回の取り組みは同質のコメを国産で賄おうというもの。“インディカ米=輸入米”との固定概念に風穴を開け、原料米の安心安全を確保しながら、休耕田の有効活用を通じ農業再生にもつなげるねらいがある。