【福岡】料飲店関係者やそのお客さんが、清酒の濾過工程を見学する一風変わった会が9月6日、清酒「山の寿」醸造元、山口(山口伊平代表、久留米市北野町)で催された。主催したのは酒店の住吉酒販(庄島真一代表、福岡市博多区)。濾過が酒質の向上や保持にとって大切な工程であることを理解してもらうのがねらいで、企画には、濾過が悪いものとの決めつけを払しょくし、清酒をもっと自由な発想で楽しんでもらいたいとの願いが込められている。
上槽(搾り)後の酒には、滓(おり)などの浮遊物のほか、リボフラビン(新酒特有の色の正体)や、火落ち菌の栄養分となるビタミン類やペプチド、熟成に関わる成分が多く含まれている。それらの成分によって起きる火落ちや、熟成に伴う酒質変化、例えば酒色が濃くなったり、老ね香や雑味が出るのを抑えるために、成分除去する一つの方法が活性炭濾過だ。もちろん、活性炭を使わないように仕込む酒、その酒の良さもあるが、普通酒などでは活性炭を使うことで酒質向上を目指す選択肢もある。
濾過工程を公開するのは異例。炭素濾過は「炭をぶちこむ」などと表現され、マイナスイメージをもつ流通・料飲店関係者、消費者が少なくないからだ。理解が浅ければ誤解を招いてしまう。
約50人が参加した会では、杜氏の忽那(くつな)信太郎さん(32)が説明にあたった。同氏は福岡県出身。東京農大卒業後、広島県の銘醸蔵などで造りの技を磨いた。同社が4蔵目となる。
濾過に使う活性炭や濾過助剤の現物を示しながら、普通酒で実際に濾過作業を行った。比較できるように、タンクから引いたままの酒と、そこへ活性炭を入れたものを用意。参加者は黒くなった酒に驚く。濾過機を分解し、濾紙をはさみ作業開始。目詰まりを防止する濾過助剤を投入すると、濾過速度が上がり、清澄な清酒が出てきた。濾過機と濾過後の酒を注視する一同。様変わりした酒に再び驚く。そして濾過した酒と、していない酒を比較試飲。好みはあれど、酒の違いを実体験し、濾過を行う意味も感じたようだ。
住吉酒販の庄島代表は、「無濾過(の酒)が良くて、濾過は悪いとか、純米酒は良くて、それ以外は悪いといった固定概念に縛られるのではなく、もっと自由な発想でお酒を楽しんでほしい。実際に見学することで、濾過の大切さも分かっただろう」と語る。