【鹿児島】国分酒造協業組合(霧島市国分川原)の芋焼酎の仕込みは、例年と同時期に始まり、堅調な販売をうかがわせる。県下では焼酎ブームのかげりとともに、販売不振から原酒を入れたタンクが空かず、仕込みに入れない蔵もあるからだ。
地元で愛飲されるオープン流通の「さつま国分」、小売店と直取引する限定流通の「いも麹芋」などが基幹商品。年間出荷量は4500石程度(アルコール分25度換算)で、販売金額ベースでは限定流通商品が5割以上を占める。直接取引する小売店は県内約30店、県外約130店に及ぶ。
「いも麹芋」は100%サツマイモで仕込んだ芋焼酎。麹にコメではなく芋を使う“純芋焼酎”。麹に芋を使う商品は他社にもあるが、平成11年全国展開した元祖的商品だ。限定流通商品には、黄麹仕込みの純芋焼酎「純芋」や、大正時代に使われていた黒麹の老麹(ひねこうじ)を用いる「大正の一滴」などがある。いずれも独創的な発想と、安田宣久杜氏の技から生まれる芋焼酎だ。
消費者に固有の価値を伝えるため、流通との信頼関係は欠かせない。小売店との直取引を始めたのは、「いも麹芋」を展開した平成11年のこと。当時の取扱い店は県内外合わせ約50店。年間の販売量は200石程度だったが、現在では2000石を超える。
同社の製品倉庫には、全取引店の店判があって出荷時、それぞれの店ごとにこの判が捺(お)される。専務理事・笹山護さん(42)は信頼の証しなのだという。「酒販店さんに、蔵の姿勢を示すことだと考えています。あなたにゆだねているんです、ということです」。そんな気持ちが込められる。
笹山さんは早くから前割りを提案してきた人物で、仕込み水で前割りした焼酎を、風情のある徳利様の“前割焼酎びん”(容量1・8l)に詰めた商品も企画し販売している。
そして、より農業に近づく新たな取り組みも。同社が使う芋は大方が黄金千貫(こがねせんがん)だが、「大正の一滴・蔓無源氏(つるなしげんぢ)」は、蔓無源氏という品種の芋で仕込んだものだ。黄金千貫は昭和41年登録品種。大正時代に栽培されていた芋を求め、行き着いたのが蔓無源氏だった。明治40年に鹿児島県で発見され、昭和30年ごろまで西日本で栽培されていた。栽培復活を目指し、県農業試験場を訪ね10本ほどの苗を分けてもらったのは、平成15年の夏。焼酎ブームピークの時だった。多くのメーカーが供給対応に終始した時期に、同社は畑へと足を運び、今も栽培を担う霧島市福山町の農家、谷山秀時さんと出会った。これまで原酒で展開してきた「蔓無源氏」だが、今秋からはアルコール分26度ものの販売も開始する予定だ。