鹿県曽於市で試験栽培開始 “国産長粒米”実用探る

 【鹿児島】焼酎用長粒米(インディカ米)の田植えが6月18日、曽於市財部町新田地区で行われた。芋焼酎の麹用原料米としてはミニマムアクセス米(MA米)のタイ産長粒米などが使われてきたが、事故米穀の不正規流通事件で安全性が問われる事態に――。焼酎製造者の間には、インディカ米が酒質に与える影響は大きく、使用を継続したいとの声もあり、その国産化を目指すための試験栽培を開始したもの。これまでの“インディカ米=輸入米”との固定概念に風穴を開け、原料米の安心安全を確保しながら、休耕田の有効活用を通じ農業再生にもつなげるねらいがある。

 構想の具体化を目指してきたのは、県内で酒類流通業に携わる前畑浩一氏(53)。曽於市で酒小売業を営み、志布志市の酒卸・天世味酒販の代表者でもある同氏は、10年以上も前から国産米での麹造りを模索し、栽培が途絶えていた白玉米を復活させ、そのコメを麹に使った芋焼酎「侍士の門」の誕生、その後の販売をけん引してきた。

 同氏は今年1月、“長粒米栽培研究会”を立ち上げ、曽於市・池田孝市長に対し、「焼酎用長粒米栽培計画へのご支援について」と題する要望書を提出。市長が支援を表明し、鹿児島県知事とも接見。県農政も協力する形で試験栽培開始の準備を進めてきた。

 当日は焼酎の蔵元3社をはじめ、前畑氏ら酒類流通業者、曽於市の行政関係者や市議、栽培指導員など約20人が参集。同様の構想を抱く指宿市の市議や蔵元も参加し、試験栽培開始を記念し長粒米品種をメインに9品種の苗を手植えした。<9品種(飼料用品種含む)=タカナリ

(関東146号)、ハバタキ(北陸129号)、ホシユタカ(中国96号)、北陸218号、夢十色(北陸142号)、北陸193号、ch86、タチアオバ、ニシアオバ>種もみは研究試料として県などを通じ入手したもので、同地区の農家・川添光博さんが所有する田のうち、5畝ほどを品種ごとに9区画に分け試験田とし、短粒品種のヒノヒカリと比較しながら、生育状況を観察する予定。同地の気候や自然条件との相性や収量、醸造適性などをポイントに、3年間をかけ優良品種を選抜し、実用化を目指す。

 長粒米の国内での栽培は、稲わらの確保などを目的とする飼料用で実績があり、酒類業界関係では沖縄県の泡盛メーカーの原料米としての実績があるだけ。本格焼酎の原料米としての実用化は新たな挑戦となる。

 参加蔵元の一人は、「焼酎の味に、コメ(麹)は決定的な影響を与える。いわば“焼酎の人格”はコメでつくられると考えている。そのためにインディカ米は不可欠」だと語る。初の試みに対し、「(生育状況や収量などが)まったく不透明で、価格も気になる」(別の蔵元)との声も。指宿市の市議は、「多収が見込めるし、休耕田の転作品目に原料米が新たに加われば補助金対象になり、MA米との価格差が縮まる可能性も出てくる」と期待を込める。

 曽於市の職員は、地産地消の推進へ寄与するとの見方も示した。「焼酎の原料用以外にも活用していけば、産地のブランド化にも役立つ。取り組みは大きな広がりになるのではないか」。前畑氏は、「蔵元だけでなく、休耕田の問題が解消すれば、農家にとっても利益が出てくる。小さな田んぼから、大きな楽しみを生んでいきたい」と語る。

(掲載日:2009年07月01日)

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