【熊本】6月7日、山都町御岳地区でレイホウの田植えがあった。同町内の通潤酒造(清酒「通潤」醸造元、山下泰雄社長)が純米酒「雲雀」(ひばり)の仕込みに使うコメを、取扱い酒販店や契約栽培農家とともに汗し手植えするもので、当日は酒販店の家族らも含め10人ほどが参加。今期の“雲雀づくり”を田んぼからスタートさせた。
「雲雀」は米・米麹ともにレイホウを使う純米酒(精米歩合60%)。熊本県の“地の酒”アピールのため、蔵元と県内の酒販店らが企画した。発売は2004年。県鳥・雲雀を写生したようなラベルデザインは地元の美術愛好家集団が手がけた。
取扱い店は現在、同町内の酒販店、県内の8店の酒販店と1店の百貨店。かかわる諸人が、「特別な酒ではなく、晩酌で飲んでおいしい純米酒。“くまもとの酒”の味わいを広めたい」との思いを抱く。
田植え当日はハレ。今年は3戸の農家が「雲雀」に使うレイホウの栽培にあたる予定だが、うち1戸の田んぼの一部、高台に天然記念物・唐笠松が見える田んぼ7畝ほどに、1時間ほどをかけ早苗を植え付けていった。水が引き込まれた田は子供らにとっては遊び場。イモリやカエル、ゲンゴロウを見つけては歓声を上げた。
醸造にあたる通潤酒造は、明和7年(1770年)に創業。かつては“備前屋”と呼ばれ、一貫して「切れ味の良い濃厚辛口の地酒」を醸してきた。地元産のレイホウのみを使い、熊本酵母で仕込む蔵元。山下社長は、「仕込みに使うコメの品種を替えるには10年はかかるし、農家も蔵元もそれに振り回される。昔から当たり前にあって使ってきたレイホウで、今後も酒造りをしていきたい」と語る。その土地の風土にはぐくまれてきたレイホウは、「飲みあきしない、きれいな味の酒」を造るのに適しているとも。いわば、天与の恵みを生かし地酒を造る。
前日から町内に泊まり、田植えに参加した熊本市内の酒販店主は、「今の商売の柱は地元のお酒。顔が見える農家や蔵元が、一所懸命につくっていることを伝えていくことが、心豊かな商売につながっていくように思う」と語る。