【鹿児島】鹿児島県本格焼酎技術研究会(宇都建夫会長)は3月13日、鹿児島市内のホテルで平成20年度第2回講演会を開催した。同会は県下焼酎メーカーの技術交流を目指すもので、当日は約160人が出席。3氏の講演を聴講した。
開会あいさつで宇都会長は、本格焼酎の10年ぶり前年割れに言及。昨秋には需要回復が予測されていたものの、事故米事件や景気悪化で盛り返すに至らなかった市場動向、さらに現況については、「甲乙混和の安い焼酎へと流れが変わり、大きな影響を受けている。全体では40万石で伸び率も2ケタ。景気の悪さが追い風になっている」と指摘した。「焼酎は大衆酒で不況に左右されない酒だったが、都市部では大衆酒から外れる価格帯になってきているのではないか」との見方も。需要不振から価格競争に入ることへ懸念を示し、「甲乙混和焼酎との差別化を徹底的にやっていかねばならない」と訴えた。
講演は、①本格焼酎の手造りの頃~女たちをめぐる物語~(フリーライター・遠山恵子氏)②加工食品工場におけるトレーサビリティシステムの構築と国際標準化コードの重要性について(ITサポートシステム代表<元・キューピー開発部長>高山勇氏)③本格焼酎市場の現状と展望~現在の焼酎の立ち位置と将来性を探る~(醸造産業新聞社専務取締役・岩田年弘氏>--の3題。
遠山氏は、「薩摩見聞記」など古い文書を読み解きながら、焼酎の文化的側面や庶民の暮らしとのかかわりに触れた。粟飯を常食し、その粟をはじめキビ、ヒエなどの雑穀、ソテツや南瓜など、「どんなものからでも焼酎を造った」。
焼酎製造の指南書も流布。寒天を使った清澄や骨炭を用いたオリ引き、蒸留時に木炭を通す“無臭焼酎採取法”等々。焼酎をみりんで割り冷やして楽しむ風流な飲み方も紹介。上方では“柳蔭(やなぎかげ)”、江戸では“本直し(ほんなほし)”と称したもの。甘味が貴重な時代ゆえ、“砂糖焼酎”なるものも。薬用酒的に扱われ、江戸時代には現在の価格に換算し1升で1万6000円との記録も残る。
薩摩や奄美では、味噌や焼酎など発酵食品を造る技量が女性の結婚条件の一つとして問われたという。「焼酎は、自家醸造の中、女の台所から生まれた。庶民の酒は台所で造られた。南の焼酎大国の気質が醸造技術を発展させた」と結論付けた。
FA(ファクトリーオートメーション)をIT面で支援するシステムを、現場サイドの声を反映し構築した高山氏。二次元コード(QR<クイック・レスポンス>コード)によるデータ活用で、加工作業中、原材料の小分け・配合ミスの防止を図り、ミス発生時にはその場で作業者に伝えることを可能にした。原材料の生産・流通履歴が保存され、記録がそのままトレーサビリティデータとなる。
「食の安心を支えるのは、全従業員の7割を占めるパート」だとして、「作業者の心の負担を減らす」(高山氏)ことにエネルギーを傾け開発したシステム。「8を3とを読み間違えて計量していないかと思うと夜眠れない」という声が氏を動かした。
加工食品のITシステムのポイントを挙げた。「事故が起きた後のトレーサビリティよりも、安全な食品をつくることが重要」「ISO・HACCP等の基準システムを導入しても品質は守れない」「人の五感に頼って現場で品質を作り上げており『人』が大切」。
新聞社から見た業界--。岩田氏は本格焼酎の動向を原料別に分析した上で、市場全体について、「減ったとしても、300万石を超え大きな規模を維持しており、悲観的にならなくていい」と語った。20年の課税数量は17年と同水準。出荷構成比では「近年(麦と芋が)クロスの可能性もある」と示唆した。
甲類も4lペットが中小料飲店でも使われ始めたことで堅調。混和焼酎増が上乗せされ規模を維持。甲乙混和焼酎については、ブランドごとの販売量も示した。
食品スーパーのPOSデータから、乙類ではパックの売上げ増が顕著。値上げを受入れ売価は上がっているとした。市場軟化が懸念されるなか、日本茶など清涼飲料が価格が低いほど売れるような傾向は、本格焼酎にはなく、収益を落とさない販売施策を求めた。
「(本格焼酎にとって)未開拓地は相当あり、どこまで北上できるか」。「伝統とか文化とか地域との一貫性を大切にしてブランドにすることが、今でも一番必要なこと」だと強調した。「若い人は何を飲むのか」との質問に対しては、「それよりも10年先15年先にどう飲ませるのかを考えるべき」だと答え、新たな需要創出が大きな課題だとした。