【鹿児島】「焼酎文化・いもづるの会」(八幡正則会長<かごしまの食を語る会顧問>、今村茂吉事務局長<鹿児島市「武岡酒店」>)は4月12日、鹿児島市内のホテルで総会および研修会を開催した。同会オリジナルの焼酎を販売する全国の酒販店らが集うもの。約80人が出席し講演を聴講したほか、翌日は関係焼酎蔵の見学会も催した。
同会は鹿児島の焼酎文化の普及のため、平成13年に発会。さまざまな文化発信活動にもかかわりながら、全国約140店の酒販店が、鹿児島県下7社の蔵元が造るオリジナル焼酎(10銘柄)を販売することで、全国への鹿児島焼酎文化の伝播を目指している。
総会では冒頭、会員酒販店で急逝した平嶋雄三郎氏(福岡県北九州市「ひらしま酒店」)の冥福を祈り黙とうが捧げられた。
あいさつに立った八幡会長は、焼酎ブーム下に予想した甲乙混和焼酎との競争が、激化している状況を指摘。出席の酒販店に対し、「第一線で愛飲者に直に触れている感触を教えていただくことが勉強になる」と呼びかけ、会の活動への意見や提言を求めた。続いて今村事務局長が活動内容などを報告。酒販店の確認事項としてあらためて、以下提起した。
「有名銘柄を追うことなく『種を蒔(ま)き・苗を育て・収穫を喜び合う』生産者のような純粋で謙虚な精神を基本理念に『共存共栄』『会員互譲』を旨として、『商売繁盛』『家業繁栄』をはかり、地域の信頼と店格を高める努力をする」。「『又売り』をせず『手売り』に徹し、インターネット販売は厳に慎み、お互いの顔が見える販売に徹する」。オリジナル商品を、原産地呼称運動を推進するものと位置付け、販売においては説明と試飲を求めた。
研修会・講演は3題(①「薩摩焼酎と篤姫」<鹿児島大学法文学部人文学科・原口泉教授>②「本格焼酎の現状とこれから」<鹿児島大学農学部焼酎学講座・鮫島吉廣教授>③「不況の中でもモノを売る」<(有)IPA日本酒情報研究所・橋本隆志代表>)。
NHK大河ドラマ「篤姫」の時代考証を担った原口教授は、篤姫の人物像から鹿児島独特の風土、そこで生きる人間、生まれる産物の姿を浮き彫りにした。「これほど風土性を持ち、地域に密着している酒は焼酎とシャンパンしかない」とも。「ごく当たり前に地域でつくったものが、世界の人の心を動かしている」と語り、不毛の地であることや歴史的に逆境に立たされるなど、薩摩とシャンパーニュには共通点が多いとも指摘した。「薩摩」表示には県産のサツマイモを使う規定があり、「これだけ自分を縛り、厳しい条件を付けている焼酎はない」とし、訴えるべき価値を提案した。
鮫島教授は事故米穀の事件にも触れた。事件を契機に消費者のなかに、芋焼酎の仕込みにコメが使われていること、しかも外米であることへ疑念が生じたが、同氏はあらためて芋焼酎に米麹を使う必然性や、外米使用の歴史や技術を踏まえ、「外米使用は薩摩の焼酎文化の一つ」だとの持論を展開した。本格焼酎が成長したのは、「後ろめたいことが何もない業界を造り上げたから」だとし、「これが最大の財産だ」と訴えた。甲乙混和焼酎は伸びてはいるが、ブレンデッド・ウイスキーのようにモルト・ウイスキーとは異なる独自の世界を構築しているものではなく、あくまで本格焼酎があることで成り立っているものだとし、それだけに本格焼酎が独自性を失わず、定義を含め認知度を上げることが不可欠だと指摘した。
販売不振を不況のせいにするな、とは橋本代表の弁。売れているモノ、成長している企業の事例を挙げてヒントとした。「焼酎ブームは芋焼酎が引っ張ったもので、本格焼酎のことは知られていない」との見方。多くの課題を克服していく上で、甲乙混和焼酎の台頭は本格焼酎業界にプラスになるとの逆説も示した。「本格焼酎に初めて対立軸ができた。日本酒は対立軸がないのが衰退要因になっている。だから敵ではなく、市場拡大に活かせる」。チャンスとするためには、“純国産”などで商品の物語を確立していくことが急務。対立軸という視点では、酒の専門店はDSの衰退によって、「消費者にとって分かりやすかった比較対照を失った」。購買層の2・5%に過ぎない“イノベーター”(革新的なお客さん)で成り立たせてきた専門店経営は今後通用せず、“マジョリティ”(大衆)の獲得が不可欠で、カリスマ経営も継続性がないとして否定した。