【熊本】田植えや稲刈りで汗し、酒の袋吊搾りも体験した“自酒づくり”ゴールの日。愛おしい酒が詰められたボトルに、手づくりのマイ・ラベルを貼り、新酒を楽しむ会が2月1日、醸造元の花の香酒造(和水町、神田優子社長)と同町内であった。
蔵元がある和水町の住民自治団体「富貴の里吉地」(吉開重喜会長)が消費者を対象に展開し、3年目を迎えた“なごみのおいしい自酒づくりオーナー事業”の一環。約30人のオーナー(年会費1口1万円、受取酒1・8l1本、720ml3本)が同町を訪れ、米作りや酒造り、和紙すきなどを体験し、自分だけの酒“自酒”づくりに挑戦してきた。体験はそのまま、まちの自然や人、魅力に触れる機会となり、交流も深めた。
酒は、1反5畝の田んぼで栽培された和水町吉地産のレイホウだけで醸した純米酒。レイホウは、熊本県産酒用の酒米として重宝されてきたが、近年は作付が減っている品種だ。昨年は豊作で12俵(1俵60kg)を収穫。1・8l350本、720ml800本の酒になった。
当日はオーナー、その家族や友人など約50人が参加。富貴の里吉地・吉開会長は「思い思いの名前を付けた本当のマイ・サケを楽しんで」と感慨深げ。蔵元の神田さんは、「自分の娘を嫁に出す気持ちで仕上げてほしい」と語った。
各人があらかじめ制作してきたラベルは、十人十色、独創あふれるものばかり。思わず微笑むような酒名や凝ったデザイン、ある女性はハート型に、幼子は貼り絵風に、丹念に草花や景色を手描きしたり、田植えでの記念写真をプリントしたり。貼りつけ中のラベルをのぞき込み、感想を交わし、自酒の誕生を祝うように賑やかな時を過ごした。
昨年に続き参加した熊本市の女性は、「自分オリジナルのものができてうれしい。友だちにもプレゼントしたい」と大満足。自酒づくりで同町を訪ねるまでは、まちのことも、蔵があることも知らなかった。いまは町内に、お気に入りの“寄り道どころ”もできた。事業を支える役場の関係者も、「まちの観光イベントを紹介する場でもあり、皆さん馴染みの場所も増えてきた」と話し、地域活性化への波及効果を認める。
オーナー分以外の酒は、「“なごみのおいしい自酒”富貴の里吉地」の酒名で地元を中心に販売予定。事業は蔵元と消費者の距離をぐっと縮めた。「お酒ができるまでを知ることは、日本酒をもっと飲んでいただくきっかけになります」(神田さん)。日本酒がまちの魅力を伝える媒体となって、人と人をつないでいる。