【熊本】菊池川流域、菊池・山鹿・玉名地区の8店の酒販店が連携し、販売はもとより、米作りにもかかわる日本酒「菊池川」をはぐくむ取り組みが今年も始まった。スタートは仕込みに使うコメ、雄町(おまち)の田植え。玉名市では取扱い酒販店の一店「錦の露」(玉名市高瀬)の吉田昌史さん(34)が、同店のお客さんや得意先料飲店に声をかけ、7月6日、玉名市小島にある農家谷口伸一さん所有の田んぼ1反で、雄町の苗を手植えした。田植えには約20人が参加。初体験の大人も子供も素足で土とたわむれ、水田に歓声が響いた。
取り組みは、酒販店「渡辺商店」(菊池市隈府)の渡辺義文さん(36)が、菊池川をキーワードに、流域のコメ生産農家と、酒の造り手・売り手が手を取り合って、酒が地元の豊かな自然の恵みから生まれることをアピールしようと企画。昨年6月、菊池市内で消費者とともに、初めて雄町の田植えを行った。渡辺さんは自ら農業に携わり、自然農法で育てたコメを使った米焼酎も販売中。雄町栽培にも、生産農家の一軒としてかかわっている。
雄町は原種系の酒造好適米として有名だが、近年、県内での栽培や仕込みに使われたケースはなく、岡山県から種もみを持ち込み、しかも無農薬・無肥料の自然農法で栽培した。それでも昨秋、約30俵(1俵=60kg)の収獲にこぎつけ、同じ菊池川流域の蔵元、千代の園酒造(山鹿市、本田雅晴社長)が、仕込み水に「(菊池川源流域の)八方ヶ岳の麓に流れいずる椎場川の水」を使い、熊本酵母で純米吟醸酒、1・8l換算約1000本を醸した。今年4月22日には、醸された「菊池川」のお披露目会も催し、以降、取扱い店が販売にあたっている。
今回の玉名での田植えは、菊池の生産農家とのつながりで実現したもの。菊池では6月29日、すでに田植えを終了。雄町の作付が、菊池川流域の2地域へと広がることで、取り組みの一層の浸透が期待される。両地域を合わせ今年は、8反で雄町が栽培されることになる。
錦の露の吉田さんは、日本酒「菊池川」をめぐる取り組みが、「郷土のお酒への思いを深めることに通じ、農業の一端に触れる機会をつくることで、地元のお酒へ愛着を持ってもらうことにもつながる」と話す。