【熊本】最終目標は、球磨焼酎の世界ブランドへの飛躍--。そんな目標を掲げ、人吉・球磨地域で産する米焼酎“球磨焼酎”のブランド確立、国内での浸透・普及に取り組む球磨焼酎酒造組合(28社、林篤理事長)が2月18日、人吉市の人吉商工会議所でブランド戦略の核となる基本理念“球磨焼酎・ミッション”、目指すべき姿を描く“同ビジョン”を発表。稲作文化や豊かな自然、500年の歴史と伝統を球磨焼酎の価値を支える骨格、バックボーンだとして鮮明に打ち出し、今後の具体的施策も示した。
ミッションなどの制定は、中小企業庁、日本商工会議所、全国商工会連合会が展開する「JAPANブランド育成支援事業」採択後、昨年6月から進めてきたもので、ブランド確立の施策の基になる戦略策定にあたる。蔵元の若手組織・酒造組合青年部を中心に、商工会議所、ジェトロ関係者らで構成する「『球磨焼酎を世界ブランドに』プロジェクト実施委員会」(高橋昌也委員長=酒造組合青年部長、高橋酒造専務)が主導し、ブランディングに関する有識者を交えてのディスカッションを重ね、球磨焼酎に対する首都圏住民の意識調査・分析も行った。
球磨焼酎の強みや弱みを探るSWOT分析では、強みとして、①コメを原料とし、技術力が高く、歴史・文化を有す②水の良さ、ネイティブ感がある③食中酒としての適性に優れる④小さい地域に蔵がまとまって在る⑤味のバリエーションが豊富--など。弱みとして、①全国的ブームの芋焼酎と比べ個性がない②球磨焼酎自体、また球磨という土地そのものの知名度が低い③地元意識が希薄④蔵元の協調性がない--など挙げた。加えて、「健康志向、スローフードの風潮などから、本格焼酎のブームは継続しており、機会には恵まれている。米焼酎はブレイクしていない分、産地指定ブランドとして可能性を秘めている」との見方を示した。
ミッション(酒造組合の基本理念)では、「日本の稲作文化と豊かな球磨の自然から生まれた球磨焼酎の500年の歴史と伝統を基に」、①球磨の風土に根ざした、世界中の人々に愛される高品質な米焼酎を提供します②地域の人々と共に、地域の文化の振興と経済の活性化に貢献します③球磨焼酎を育む自然環境の保全に努めます④この伝統産業を後世まで引き継いでいきます--と宣言。ビジョンには、地元の生活者や日本全国・世界のお客様との関係、球磨焼酎28蔵元相互や蔵元で働く従業員との関係のなかで、「地域・文化・自然との永続的な共生を図るために」、果たすべき役割やあるべき姿を描いた。
首都圏住民の意識調査(インターネット調査、600サンプル)では、認知度の低さが判明。ただ、米焼酎を好きな層は8割弱あるとして、認知度の向上が消費へとつながる可能性は大きい、との手応えも得た。
「JAPANブランド育成支援事業」に対しては、中小企業庁が補助金を給付。今回、酒造組合が取り組んだ戦略策定の段階では500万円の定額、ブランド確立の段階に入ると3年をメドに単年度ごとに、3000万円の事業費を上限に、その3分の2を給付することになっている。
事業採択のためには年度ごとの申請が必要だが、同組合では今後の具体的事業として、関係者の意識統一を促すブランドブックの作成、球磨焼酎の歴史に関する書籍の発刊、羽田・関西空港などでのポスター掲示、全蔵元の焼酎が楽しめるセット商品の開発、首都・関西圏での試飲会開催、飲食店など販促活動の拠点づくり--などに取り組みたいとしている。
事業をコーディネートする酒文化研究所・狩野卓也代表は、「10年、20年と(事業を)続ける礎ができた」と評価。実施委高橋委員長は、「早い段階で、球磨焼酎ブランドを全国の生活者へ浸透させたい」と語った。
球磨焼酎は、世界的にはWTO(世界貿易機関)トリプス協定に基づき産地表示が保護され、国内法規下でも地域団体商標(地域ブランド)として登録。昨年3月には統一ロゴマークも定めている。
同組合は、球磨焼酎を熟知した球磨焼酎マスター“球磨焼酎案内人”を募る認定制度を発足。3月16日、人吉市で初の講習会、認定試験を行う。「球磨焼酎の良さを、今まで以上に多くの方々に知っていただくため」(同組合)に企画したもの。案内人がいる酒販店や飲食店をホームページで紹介することも計画している。球磨焼酎の魅力を伝える人的資源の発掘・育成につなげる。