全国小売酒販組合中央会は5月17日、東京目黒の全国酒販会館で第54回通常総会を開催し、平成18年度事業報告および同年度決算報告案を承認した。18年度事業報告の審議では、藤田会長ら執行部から現在50%にまで低下している組織率(酒類小売業者の酒販組合への加入率)を70%超までに引き上げることを目指し、組織小売業者などと協議中で、酒販組合への加入促進を図る、との方針が示された。酒販業者の経営安定化に不可欠の酒類市場の正常化問題では、不公正、不公平な価格の是正を強く求める要望が会員から出され、酒類の不当廉売を「酒類の公正取引<新>指針」に沿っての取り締まりが行政に強く訴求された。
総会の冒頭で藤田中央会会長があいさつし、次のように述べた。
「2年前に会長に就任してからの間、次のような目立った案件があった。酒販協同組合の卸販売は、員外者への販売の枠が20%まで認められた。また、国税庁がホテル、料飲店への小売免許緩和を提起したが、酒販業界は、組合員がお客にしている料飲店などに酒類小売免許を下付することは、断固容認出来ない、と反対した結果、見送りとなり、将来的にも容認されないとみられる。酒類市場における不公平、不公正な価格の是正、飲酒運転の撲滅の問題が起こり、不公正な価格に対しては、国税庁、公正取引委員会へ是正を強く求めており、昨年8月に新指針が制定され、価格問題は、酒販店の経営基盤として最も大切で、行政のしっかりした対応を望みたい。国が必要としている酒販業界の、組織の再生と継続を国税庁に支援してもらっており、月に1回くらいの国税庁との懇談で要請しているが、酒販組合の組織率は、5~6年のうちに約3万店がやむなく業界から撤退しているので、50%にとどまっている。すでに、大手スーパーのイトーヨーカ堂が組合に加入しているが、ほかの大手スーパーやコンビニエンスストアも組合への加入を望んでおり、先方の意見を聞き、情報交換して組織率の向上を図り、70%以上の組織率を目指すので、私どもの意をくんでいただきたい」--と述べた。
ついで来賓の小部春美・国税庁酒税課長は、来賓あいさつの中で、「酒販中央会から国税庁に対する要望書をいただいているが、酒販組合への加入促進について、大手小売業者の組合加入の動きは、組合にとって本当によかったと思う。加入促進と組合活動の活性化に役立つものと考えている。国税庁は、酒類小売業の経営に関する相談をホームページに開設し、酒ローンも継続するなど酒類小売業を支援している。酒販業者は、研修制度の着実な実施、未成年者飲酒防止のための表示の適正化などをお願いしたい。小売業者は、消費者に直結しているので、酒類の社会的要請に適切に対応してもらいたい」--と要請した。
議長に宮城県の鈴木康雄氏を選任して議案審議に入り、第1号議案=平成18年度事業報告承認の件を上程し、島田事務局長が同報告書の要点を説明の後、質疑応答が行われた。
(1)九州(別府組合)は、「大手スーパーなどが酒販組合に加入する場合は、賦課金があまりに高いと入りにくいので、定額制にすべきだ」と要望した。
これについて藤田会長は、「組織小売業者の加入の波が来ると思うので話し合いたい。すでに組合加入が決まった地区では、19年度は、月額850円を徴収すると決定している。要するに、組合加入を促進し、70%を超える程度に組織率向上を願っている」と答えた。
次に四十万副会長は、「組合へ加入しやすい条件作りをしたい。今は均等割と販売数量割だが、このままでは実情に合わない。組織小売業者の組合加入は、1社とするか、1場にするかなどの検討が必要で、加入率を高めるには賦課金をどうするかを検討したい」と、答弁した。
(2)京都府は、「国税庁の酒類公正取引(新)指針は、何のためか。不当廉売を指摘し、言っただけでは何もならない。不当廉売と注意しただけではだめで、十分に改善指導をしてもらいたい。そうでなければ、周辺の酒販店は、つぶされてしまう。新指針によって強く取り締まって欲しい」と要望。
これについて藤田会長は、「不当廉売をなくし、不公正、不公平な市場価格を是正してもらわなければならない。今後も、月1回の国税庁との話し合いで、この問題を強く要望して行きたい」と述べた。
以上で平成18年度事業報告書を承認の後、第2号議案=平成18年度賦課金部門収支計算書・賃借対照表・財産目録などの18年度決算案件を承認した。
酒販年金に関する経過と対応方法案“1”第1期15%分返還金未受領者への返還方法について…供託、銀行送金、そのほかなどでの第1期分返還の実行“2”内外訴訟に関する経過報告…国内原告訴訟・国内被告訴訟・海外被告訴訟“3”年金清算処理への今後の対応--も承認。
今後の検討課題としては、▽年金義損資金の推進▽小売酒販組合などに係る定款・規約の見直し検討▽小売酒販組合などに係る賦課金の上限、下限の設定および加入金の適正基準の検討提案▽小売酒販組合の事務体制整備--を検討することとした。
平成18年度事業報告概況=平成15年5月に成立した「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法(以下『緊急措置法』)」は、平成18年8月末日をもって失効した。平成17事務年度(平成17年7月~平成18年6月)の酒類取引状況等実態調査では、1373場の一般調査の内、国税庁「指針」に則していない件数が1286場に上るなど、依然としてその現状は惨たるものがある。
また飲酒環境をかんがみると、福岡県で起きた飲酒運転事故を契機とした飲酒運転撲滅が全国的・継続的な機運となるなど、飲酒環境整備元年とも言うべき社会情勢であり、地区組合を中心とした取組みが図られ、組合の社会的管理体制整備を印象付ける機会となった。
そのような環境の中、一般酒類小売業免許の整備・合理化・下付要件緩和以降、現執行部下においては、平成17年の国税庁からの業務是正命令・運営改善勧告を踏まえ、中央会事務機能強化を図り、本年度4月11日には同庁からの酒類販売管理研修実施団体の指定を受けた。
この指定を受けて、より実効的な研修とすべく、行政をはじめ他の研修全国団体との協議に参加し、従来無かった情報共有に努めている。後述する平成18年8月国税庁発出「酒類に関する公正な取引のための指針」(以下「新指針」)には、酒類の特殊性にかんがみれば顧客誘引のための「おとり商品」として酒を使用することは不適正であり、的確な需給見通しに基づく適正生産を行うことが必要であるから、透明かつ合理的なリベート基準が必要との文言などが盛り込まれ、一層踏み込んだ内容の発出となり、中央会と組合員の粘り強い要請が実った結果となった。また、平成18年11月に行われた「酒類販売協力員制度」については、中央会が要望した「酒類販売管理団体監視員(検査員の別称・以下『監視員』)」との部分的同一性がみられるが、酒類販売場における法令遵守の実施状況確認業務などを小売組合の業務とするよう要望し、消費者と直に接する小売酒販組合として社会的要望に応え、組合機能の充実を図ることを訴えた。また、平成18年12月の中央会臨時総会決議を受け、後述する酒類販売管理研修および組合組織維持対応などを協議すべく、国税庁との定期的な協議を開始し、今後、中央会において組合の加入促進に向けた取り組みを行っていくこととした。
酒販年金に係る状況では、クレディ・スイスへの約160億円の損害賠償訴訟提訴に着手し、一連の訴訟提訴を終了し、関連訴訟への全力的対応に努めた。
一方で、市場価格是正に向けた公正取引委員会の酒類ガイドラインが新指針の考え方に沿ったものとなるよう、政治への理解を求め、参議院予算委員会・内閣委員会で取り上げられる結果となった。中央会は、引き続き酒政連と連携し、行政・政治とのバランス感覚を併せ持った緊密な対話・協力関係を構築し、積極的に事業展開を図った。
1.酒販制度・社会対策事業
“1”酒販制度関係
酒類免許制度の根幹であった需給調整要件は緩和となったが、致酔性・習慣性を有する酒類の特性を考慮した社会的管理の要請は一層高まっている。特に未成年者の飲酒は非行への第一歩とも言われ、未成年者へ酒類を売らないという社会的要請は高まっている。規制緩和後の2004年度(平成16年度)未成年者への飲酒行動についての調査「この30日間に酒類を売ってもらえた経験」では中学生約17%、高校生に至っては約42%を超えている。平成18年度税制改正要望では、この社会的管理の必要性による早急なる免許制度の再構築、公正市場の確立を要望した。併せて酒税保全のみならず、WHO勧告などを踏まえた社会的管理の観点から、酒類販売管理者の更新制・定期的な研修の義務付けなどを要望した。また、これら社会的管理・酒類関連問題を減少させるために、酒類の具体的な法整備策として、酒類を適切に販売するため、卸・小売の流通分野に対する販売管理法(仮称)の制定を要望した。また、これらの社会的管理・酒類関連問題を減少させるために、酒類の具体的な法整備策として、酒類を適切に販売するため、卸・小売の流通分野に対する販売管理法(仮称)の制定を要望した。
2.市場・近代化対策事業
“1”市場関係
国税庁調査である、酒類取引場状況等実態調査実施状況では「公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針(以下『指針』)」に則していないケースが、今般発表された平成17事務年度(平成17年7月~平成18年6月)では約94%に達している。
そのような中、中央会が各行政・政治関係機関へ要望した「平成18年度税制改正要望」では、緊急措置法における国税局長から公正取引委員会への措置請求の恒久化、酒類の取引条件基準の明確化を図り、取引関係にある酒類販売業者などへの開示徹底などを要望した。また、公正市場の確保および社会的管理の整備に眼目を置いた制度改正が必要である。かつ、致酔性・習慣性を有し、国税の重要な地位を占める担税物資である特殊性にかんがみ、不当廉売などの不公正取引については「注意・警告」を迅速に行い、繰り返し行う者へは「勧告」を行うなどの罰則強化を、関係行政機関および政治への要望を行った。
平成18年8月31日、中央会・組合員の粘り強い要請により『酒類に関する公正な取引のための指針』の発出がかなった。新指針では、「今後、酒類全体における数量ベースでの国内市場の拡大が困難であることから、全事業主が独自の判断の下、的確な需給見通しに基づき、適正生産を行うことが必要である」とし、個別取引において適正な利潤を確保していくことが望まれる旨が明示された。また、国税局・公取委地方事務所などにおいて、それぞれ連絡担当者を設けて緊密な連携を図るとするなど、より踏み込んだ内容とされるなどの成果を得た。
また、国税庁が平成18年11月から募集を行った酒類販売管理協力員は、一般消費者が酒類小売販売場における未成年者飲酒防止に関する表示や店頭価格の状況を確認するものである。中央会が要望する監視員制度との同一性があるが、中央会の設立目的としてこの様な業務こそ率先して行うものであり、小売酒販組合としての監視員制度の成立・委託に引続き要望していく。
“2”近代化関係
市場・近代化対策委員会では、行政に要望する事も必要であるが、自らがルールの中で市場競争に対応できる経営基盤強化が必要である。