【東京】年金資金の外債投資などで業務上横領・背任罪に問われている関被告(小売中央会・元事務局長)の第10回公判が2月20日、東京地裁刑事第522号法廷であった。裁判官の審問に関被告が応える形で審理が進められたが、被告はそのなかで「連帯責任」を主張。元本毀損(きそん)で破たん状態の年金制度を継続するという決定に基づき、業務遂行したと訴えた。投資のリスクを感じながらも、英国政府の所管や保険の手当て、特に信頼のおける金融機関への“信託”に安全性を見いだし、投資を実行したことが浮き彫りになった。
チャンセリー債について被告および中央会は、何ら調査をしていない。金融ブローカー砂古氏の話を信じ、さらにはクレディ・スイス(以下ク社)が介在することで安全を確信した感が強い。投資リスクを問われた関被告は、「英政府所管で貸付先も法律事務所であること、保険がかかっていることで、安全だと認識した」。特に、「プロのク社のメガネにかなった商品で、疑問に思ったことはなかった」。
ク社の日下部氏は、中央会との契約は、ただ口座を開設し指示された商品を買うトラスト・アグリメント契約で、「信託契約は結んでいない」「入れ物として使ってもらった」と証言(平成18年12月8日第7回公判)しているが、被告の認識は全く違うものだった。「信じて託した」。
日下部氏との接触は、「14年12月10日過ぎ。砂古から信託契約・受託に関心があるということで、電話をしたのが初めて。(投資)契約(同年12月20日)前1週間以内のことだった」。商品ついて同氏は、「類似商品の取扱いがあり、在庫を持っている」と話したという。砂古氏からチャンセリー債以前に、高配当の商品が持ち込まれたことがあったが、「中央会は素人集団なので、金融機関を入れない直接投資はしないと明言し断った」ことも明かした。
投資コンサルタントの提案から検討・選択していた従来の投資とは違うのに、どうして分析・評価もなく決めたのか、との問には、「元本毀損で制度が存続しえるのか、事態は切迫ひっ迫していて、いち早く対応しなければならなかった。逆算し(元本回復と)合うのは本件投資だけだった。安全性を拠りどころに、方向性(結論)が出された」と訴えた。
投資実行にあたっては、三菱信託銀行の宇江氏に債券の現金化を急がせた。「こういう運用が法律に逸脱しないかどうか気になった」が、同行のコンプライアンスに照らし問題がないということで、「押印した」。被告は同行への不満もぶちまけた。「20数年間、総幹事として毎年1億円、合計20億円(の報酬)で運用して、『元本割れだから、お前たち解散しろ』という責任のなさに失望していた」。
契約の成功報酬にも話は及んだ。被告は1億3800万円を得ているが、報酬のために投資したとの指摘は、「順番が逆だ」と否定した。謝礼については砂古から、14年10月か11月、「直接的に中央会の役職員にお礼はできないが、紹介者であるAさんを通してすることは可能だ」という話があった。被告は「恥ずかしいが期待をした。しかし(投資を)やれるかどうかわからなかったし、いくらという具体的なものもなかった」。話は「吉竹専務へもしている。一緒にいたと思う」と明かした。報酬額が示唆されたのは契約後、14年12月29日、お礼にと香港に招待されたとき。「約1%」ということだった。報酬を得た感想を問われ、「想像以上のものに驚き、怖くなった。仕事を通じそういった種類のお金を手にすることは当然悪いことで、後ろめたく、怖く思った」。
一番の責任者はだれかと問われると、「連帯責任」と応えたうえで、自らの責任を認めた。「いま少しの注意、慎重さがあれば防げた事故であったかもしれない」。「中央会以外におかしいと思う人」と問われ、「いますが、私が名を挙げるのが適当なのか悩みます。ただ1点、1人でできることではない」と応じた。
大きなリスクがあったのに、どうして投資したのかとの質疑が続く。「14年9月12日の理事会、11月20日の三役会、理事会で(制度を)解散しない、ソフトランディングさせる大方針が示された。私は三役会で破たんで解散しか道はないと、はっきり言っている」。裁判官の追及は厳しかった。「どうやってソフトランディングさせるのか」。対する被告「元本ラインまで回復した時点で…」。裁判官「それができるなら、異常事態とは言えないだろう」。 弁護士は被告に尋ねた。「投資しない選択肢はあったのか。ギブアップできたのか」「できなかった。緊急措置法が大命題だったが、廃案の危機感があった」。
今回の公判では、大島和加丸氏=小売中央会北九州支部・前支部長、福岡県小売酒販組合連合会・前会長の証人尋問が予定されていたが、裁判官の審問に時間を要し、次回公判(3月27日予定)へ延期された。早ければ3月に行われると見られていた論告求刑、判決は実質4月以降にずれ込むことになる。