
【熊本】感動クライマックス、ついに迎えた搾りの日--。田植えから始まった酒造りへの参加が、酒の雫(しずく)となって結実する。
1月14日、玉名郡和水(なごみ)町の蔵元、花の香酒造(清酒「花の香」、芋焼酎「茂作」醸造元、神田優子社長)で、“特別な清酒”の搾りがあった。酒は、同町で地域おこしに取り組む住民自治団体「富貴の里吉地」と、地元行政、蔵元が連携し、初めて企画した“「なごみ」のおいしい自酒づくりオーナー事業”によって生まれたもの。消費者の米作り酒造り体験を契機に、まちの魅力をアピールし、地域活性化につなげるねらいで、45口のオーナー関係者が、昨年6月の酒米レイホウの田植えを皮切りに、草取り、稲刈り、脱穀(紙すき)などの農作業を体験してきた。
コメの作付面積は1反5畝。昨秋の稲刈りで約630kgを収穫し、蔵元が年末、純米酒として仕込んだ。その醪を搾りにかける。清酒メーカーが鑑評会出品用の吟醸酒などを搾るときに行う「袋吊り」、その後、槽(ふね)での搾りも体験した。袋に醪を入れ、ひもで結わえてタンク内につるしていく=写真=。
酒類流通など業界関係者でも体験の機会が少ない手仕事の搾りに、約10人の参加オーナーは興味津々。斗びんへと雫が垂れると歓声が上がった。福岡県篠栗町から家族連れでやってきた藤原公宏さんは、「近くに酒蔵はあるが、お酒造りはテレビで見るくらい。お酒ができていく過程に、ほんの少しかかわっただけですが、昔ながらの仕事に感動したし、お酒への愛着もでてきた。何よりもこのまちの人、蔵の人が皆いい人ばかりで、訪れるたびに楽しい時間が過ごせた」と話す。
今回の仕込みでは、純米酒のみ、製品にして1・8l100本、720ml1600本程度になりそう。オーナー(1口1万円)には、1・8l1本、720ml3本を頒布。残りのお酒は「吉地」のブランド名で、2月11日地元開催のイベントでも披露し、市販する予定だ。
先立つ同月4日には、オーナーを対象に、自ら制作のラベルを貼った新酒を楽しむ会を催す。初めての企画を振り返り、蔵元の神田社長は、「やってみて本当に良かった。玉名唯一の酒蔵としてもっと頑張らなければという強い気持ちもでてきた」と語り、消費者へ近づく取り組みへ大きな手ごたえを感じたようだった。