
【熊本】球磨焼酎酒造組合(28社、林篤理事長)は6月27日、人吉市のあゆの里で、有志組合員らが参加し今年5月に実施した英国スコットランド視察の報告会を開いた。
同地への視察ミッション派遣は、日本貿易振興機構(ジェトロ)が行うLL事業(Local to Local産業交流事業)の一環。人吉市・球磨地方と英国スコットランド両地域が、ともに基幹とする蒸留酒産業、球磨焼酎とスコッチウイスキーの交流を促すもので、球磨焼酎酒造業界にとっては、ブレンドや樽貯蔵などの技術研究、産地ブランドの強化や海外戦略を摸索するねらいがある。事業は、熊本県工業技術センター、人吉市の協力を得て、すでに昨年2月には現地調査を目的とした初めてのミッション派遣、今年1月には同地の蒸留酒コンサルタントが来日し蔵を訪ね、蒸留や貯蔵法などについて助言している。
今回のミッションには、人吉市の福永浩介市長も参加。堤正博氏(繊月酒造社長、人吉商工会議所会頭)を団長に11社の蔵元、市やジェトロの関係者ら総勢21人の編成で、5月14日から23日まで10日間の期間中に、蒸留所や蒸留機メーカーを視察したほか、行政機関も訪ね観光誘致などについて意見交換した。在ロンドン日本大使館で試飲会も催し、現地の飲食店経営者や流通業者、マスコミへ球磨焼酎の魅力をアピールした。
報告会では冒頭、林理事長が「球磨焼酎には500年の歴史があり、平成7年にはトリプス協定で国際的地理的産地の指定を受けたが、業界は十分に活かしきれなかった」と語り、あらためて産地ブランド強化への意欲を示した。堤団長は、中小メーカーの生き残りが難しい状況のなかで、シングルモルトの売り上げがシェア18%にまで回復しているとして、「手造り焼酎業界にとって希望が見えた」と語った。福永市長は、「ウイスキーは天からの賜りモノで、心で造り心によって熟成されていくもの」と、印象的だった造り手の言葉を紹介した。
試飲会は15日、ロンドンの日本大使館で開催。現地のレストラン・バーやジャーナリストら35人が出席し、球磨焼酎は11メーカー15銘柄が出展された。プレゼンテーションでは、「蒸留酒でありながら食中酒として楽しめる。日本食や中華だけでなく、西欧料理との相性も抜群だ」とアピール。参加者からは、「ピュアでクリーンな味わいを持つ球磨焼酎は、日本食や日本文学が定着していったように、必ず成功するだろう」などポテンシャルを高く評価する声が寄せられた。
酒類業関係で今回訪れた視察先は、ウイスキーメーカーが6社(アイラ島では3社)、その他ビールメーカー1社、蒸留機メーカー1社に及んだが、各社が創意を凝らした独特な形状の蒸留機を使い、酒質の個性化を追求していた。 経営トップ・レクチャーもあり、グレンモランジー社の元社長、ニールマッケロー氏が講師に。無名の零細会社は、2年前ルイ・ヴィトンが600億円で買収する会社にまで成長した。1975年から90年に至る“国際化と混乱の時代”に原酒価格が下落。同社も苦境に陥ったが、「10年ものシングルモルトに賭けた」。第一に品質。同社の蒸留機のネック(蒸気の導管=ウマ)はスコットランドで一番長く、精留効果が高いという。正統性の哲学や職人の手造りを訴え、唯一硬水で仕込むことなどもアピール。マーケティングでは競合社より高い値段を付け、値引きを一切しない方針を打ち出した。視察参加者は世界ブランドへの飛躍の礎に触れたようだ。
ジェトロ熊本・中村芳生所長は、「さらにステップを上げた交流を重ね、事業を継続させていきたい」との考えで、成果を活かした今後の展開が期待される。