
【鹿児島】鹿児島県本格焼酎技術研究会(宇都建夫会長)は3月10日、鹿児島市内のホテルで講演会を開催した。研究会は県下メーカーの技術者、県の技術研究機関などが連携し、技術交流を図るもので、毎年定例で講演会を催している。今回の講師(演題)は、飲食文化研究所代表取締役・立山雅夫氏(本格焼酎への思い、だから本格焼酎、これからも本格焼酎)、九州沖縄農業研究センター・畑作研究部・サツマイモ育種研究室長・吉永優氏(サツマイモの品種改良の現状や展望)。本紙の角田大介・営業兼業務本部長も講師(本格焼酎の市場動向と今後の展望)を務めた。
講演会には約150人が出席。飲食店事情に加え、県下蔵元に詳しく「やっぱり芋焼酎」などの著書もある立山氏は、「居酒屋メニューでは空白だった」芋焼酎が今日、必須の品目になるまでの経緯を、現場の視点から話した。増税によってメーカーは壊滅的な打撃を受けるとの見方が強かったにもかかわらず、反転隆盛を極めたのは、「逆境に強い人間力があり、“ぼっけもん”(血の気の多い豪傑)の気質で自ら活路を開く力を持っていたから」と指摘。庶民文化を根に、ブレのない歩みを続ける姿を、リコー最高顧問・浜田広氏の言葉、“周回遅れのトップランナー”(「周回遅れのランナーが、気がついてみると先頭になるような感じ。本物のステップを踏んでいたからスピードは遅く、最後尾を走っていた。ところが時代が変わり、その走りとそのスピードとその位置が一番良かった」)で示した。
「今年は、家業が母体の文化ではなく、文明としての芋焼酎がいっぺんに広がってくる」との警鐘も。芋らしさを味わってもらうために、お湯割りや温燗の提案、普及に力を注ぐことが一層大切で、ソムリエのテイスティングコメントを含め、正しくないマイナス情報の是正にも努めるよう助言した。
吉永氏は、サツマイモの近親交配を避ける性質が、品種の多様性を生んでいることや、新品種ができるまでには交配から10年間もの時間がかかることなどを説明。焼酎の原料芋として有名なコガネセンガン(黄金千貫)が、高デンプン多収品種の育種を目指す過程で生まれたこと、「千貫」は反収3・75t=1000貫に由来するなどのエピソードも披露した。
サツマイモの育種は現在、九州沖縄農業研究センター(宮崎県都城市)と作物研究所(茨城県つくば市)で行われている。焼酎用イモの育種では、焼酎の香味が実需者から高く評価されているコガネセンガンタイプの酒質を維持しながら、条溝(縦みぞ)がなく、貯蔵性や病害虫・線虫などに対する抵抗性が高いものを目標としていること、紫・橙・黄肉色の有色サツマイモを活用し、焼酎の香味の多様化にも寄与していることなどが報告された。
本紙の角田は本格焼酎市場の動向について、「ブームに火がついた」平成15年、「過熱に拍車がかかり、特に芋焼酎が総売り手市場となった」16年、「芋焼酎だけが突出の伸びとなった」17年--の状況を解説。東京マーケットの拡大がけん引したブームが落ち着き、昨年は東京・大阪市場ともに、これまでの伸長がない情勢を、卸販売量の推移(通年前年度比、東京106・5%、大阪102・3%)で示した。ある大手総合卸の販売でも、芋だけが36%増で、他原料焼酎はすべて前年割れの数字も示し、市場の変化を指摘。ビールメーカーなどが拡販の甲乙混和焼酎による市場侵食も、今後大きな影響を与える要因として上げた。
今夏以降はさらに需要が鈍化するとの予測。生産設備増強の投資に伴う過剰生産や供給過多に懸念を示し、「だぶつく商品をさばくような安売りに走ってはいけない」と訴えた。品質にさらに磨きをかけながら、なおざりになっていた需要開拓に取り組むべきだと強調した。