一連の酒販年金問題で、償還が非常に厳しい状況となっている144億円のチャンスリー債投資の経緯を知っているとされ、現在小売中央会が背任容疑で告訴を検討している同中央会の関秀雄前事務局長は今月初め、同氏の代理人である小川治彦弁護士を通じて、一部の中央会新旧役員に対し意見書を提出した。
意見書では、外債契約が言われているような同氏による独断ではなく、執行部の承認を得た上で行っていること。中央会組織と対立したり、あえて事を構える意思のないこと。そしてこの問題に関する責任を一部の人間に押しつけることは容認できないとして、現在この問題の責任はすべて前事務局長と前専務理事にあるとする中央会の見解に強く反論している。
意見書の要旨は次のとおり。
この外債投資を決めたのは前事務局長であり、またこの投資自体が詐欺である意見もあるが、こうした問題は客観的な調査をすれば、真実が明らかになること。それをせずに、先入観に基づいて、一部の人間に責任を押しつけようとするのは問題。今重要なのは資産を回収することであり、その可能性を検証することだ。
年金問題は、平成13年度に幹事会社であった三菱信託銀行から元本割れであることが報告され、財政回復が困難であることから、同行からは解散要請が出された。小売中央会は年金懇談会を設置し、対応を協議したが、この中で、組織維持のために制度の解散は行わないこと、給付減額への制度変更、元本・金利が確実に取れる運用への変更が確認された。
こうした過程で、投資顧問会社SAS社よりチャンスリー債の話が持ち込まれたが、中央会は直接そのような投資を行うリスクの高さを踏まえ、金融機関を通じた信託契約を結ぶ形での運用を主張。三菱信託銀行にも審査を依頼し、問題ないとの報告も受けた。中央会は14年12月、クレディ・スイス社に口座を開設し、15年1月から5月にかけて144億円を同社の口座に送金している。
その後、中央会は15年12月に制度解散を前提にした資産凍結を決定。しかし元本の70%しか確保されていない元本割れの状況から、年利6・75%の外債を契約満了まで継続運用し、元本に対して85%の解散給付金を支払うことを決定した。しかし16年6月、運用先であるインヴァロ社の清算が開始され、それを受けて同月30日に予定されていた20億円の償還ができなくなるという事故が発生した。中央会では7月に年金清算委員会を開催し、返戻金の支払いのため全酒協より13億円の借り入れを行った。
この経過からも分かるように、未償還が発生した外債の購入は前事務局長が独断で行ったものではなく、当初から年金委員会、理事会、総会の決定、方針に即して行われたもので、契約前に理事会の決議はないものの、事後承認は得ている。
今後の問題は詐欺であると言われているこの外債購入の真相を明らかにすることと、ローン実行会社が倒産した原因を明確にすること。そして現在の回収状況と今後の回収見通しを明確にすることだ。この2点について、早急に英国の法律事務所に依頼して独自の調査を行うべきだ。また、回収不能となる部分については、再度クレディ・スイスやファンドの責任追求についても法的検討をするべきだ。