キリン 復興支援“未来人材育成”始動

2019年05月21日

 【熊本】熊本地震から3年超。途上の復興を人の力で加速させる――。キリングループ「熊本復興支援」の一環「くまもと未来人材チャレンジステージ」(くまチャレ)の説明会及び記念セミナーが4月22日、熊本市のくまもと森都心プラザであった。5月からの定例開催に先駆け企画したもので約120人が参加。自ら熊本を興そうとの志で会場は熱気に包まれた。セミナー会場となった森都心プラザ「図書館」との共催。館内にビジネス支援センターを併設するのは全国初で、起業への活用を呼びかけた。

 熊本城を核とした「上質な生活都市」の実現、熊本中心市街地の持続的発展のための「熊本地震からの復興の加速と未来への礎となる担い手の育成」を目指し昨年4月、キリン(磯崎功典社長)、熊本市(大西一史市長)、公益財団法人日本財団(笹川陽平会長)が連携協定を締結。

 プレセミナーを経て、主体となる担い手発掘の不足、塾形式より主体的集まりによる事業推進のプラットフォームが必要と判断し今年4月「くまチャレ」発足を決めた。実施期間は2021年3月まで(3者協議で23年度末まで延長)。

 テーマは①熊本城・城下町②にぎわい・観光③食・文化――。

 人材育成の環境づくりを行う一般社団法人フミダス(濱本伸司代表理事)を事務局に、若手事業家・起業希望者・農業生産者・まちづくり関係者などの参加を呼びかけ「クマコン」(クマコンバレープロジェクト、月1回)と「クマスタ」(クマモトスタートアッププログラム、半期1回)を開催。「熊本市中心市街地グランドデザイン2050」実現へのアクションなどにもつなげる。

 キリングループは運営資金を提供するほかビジネス視点での助言、飲食・農業者との連携支援などを行う。日本財団は熊本市の信用金庫と連携し「わがまち基金」助成などを担う。

 クマコンは毎月第4水曜日19―21時の定例開催。5月22日が第1回となる。城下町正装の日をやりたいとか下通に高校生レストランをオープンさせたいなど「中心市街地を面白くしようと思っている仕掛け人が声を上げ、それを応援したい人と一緒にわくわくをつくる場」とする。クマスタは今年10月スタート。クマコンで発表されたアイデアを実現し持続可能なプランとする、社会事業・社会起業を生み出す場」。ともに熟練のコーディネーターが運営し実践的なものへと高める。

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 記念セミナー「社会をよくする事業をつくる」講師は㈱eumo(ユーモ、東京都港区六本木)代表取締役・新井和宏さん。異色の金融ベンチャーで一般金融機関が敬遠するような、しかし社会性の高い世のためになる会社や事業へ投資することで知られ、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」にも登場した人だ。

 新井さんは世界最大の投資会社を辞しeumoを興した。目指すのは“共感資本主義”の実現。「共感という見えない、貨幣換算できない価値を育み、それを基礎(資本)として活動していける社会」だという。「感謝をお金にして循環させ、皆が幸せになる通貨」コミュニティーコインにも関心を寄せる。

 「人間がお金の奴隷になる必要はない」「誰かの犠牲で成り立つ経済を終わらせよう」とも。当たり前の事が出来ていない社会認識を持つ事と、当たり前のレベルを上げることが重要だ。「イノベーションを起こすには企業外の交流人口を増やしマーケットを特定しない方がいい」。「価格で圧倒的に勝っても幸せにはならない」。それよりも「ファンを増やすこと」「売るのはストーリー。“自分事”にする力が試される。復興を自分事にするテーマがあるか」。結局「経営者の美意識と人間力で決まる」。

 投資の判断基準は「諦(あきら)めの悪い奴」「偽物ではないソーシャルベンチャーかどうか」だとし奮起を促した。

 キリンCSV戦略部「絆づくり推進室」中澤暢美室長は「8年前、東日本大震災被災からの復興支援を、主に一次産業を対象に行った実績がある。熊本地震では食と観光、熊本市と阿蘇エリアを中心に支援を行ってきた。そのなかで欠かせないのが次の時代を背負う若手担い手の育成だった。熊本でも是非、未来を引っ張る人材を育成したい」と話した。

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 熊本県・熊本市・南阿蘇村など熊本地震被災地へのキリングループの義援金・支援金等は7528万1600円に及ぶ。

 震災の年2016年12月には熊本県・日本財団と「復興応援 キリン絆プロジェクト」熊本支援に関する包括支援協定を締結。「一番搾り」など商品販売を通じ集め日本財団に設置した基金を原資とする支援金助成は今年3月31日現在、21件の個別プロジェクトに対し2億612万円に上っている。義援金等と合わせた拠出総額は2億8140万1600円となる。