九州芸文館企画「筑後酒文化」博開催

2019年05月03日

 福岡県南部、矢部・筑後川流域5市2町(筑後市・八女市・柳川市・大川市・みやま市・広川町・大木町)を筑後七国と見立て、同国内にある蔵元9社が醸す日本酒や本格焼酎の魅力を発信するのが「筑後七国『酒』文化博」だ。筑後七国活性化協議会、筑後七国商工連合会が後援。開催5回目で、最多の約5800人が来場した。


 9蔵の積極的な係わりはもとより、地酒の購入消費での支えを含め「地域の酒文化を残し次代へ繋ぐのは地元の人たちの責任。ここで生まれたものだから、出逢ってほしい酒がある。地域のお酒こそがふるさとのお酒。地元で栽培された酒米での酒造りも増えてきた。もっと誇りにしなければ」と企画立案・運営をけん引する芸文館交流事業担当・安西司さんの熱意もあって“地の酒”愛飲喚起力は絶大だ。単独蔵では難しい地域蔵酒の飲み比べでも惹きつける。

 同じ地域の酒蔵全社が参加することで、地域の宝は一層輝きを増すようだ。9蔵組織「筑後七国酒文化研究会」メンバーは、▽「金襴藤娘」後藤酒造場(八女市)▽「旭松」旭松酒造(同)▽「繁桝」高橋商店(同)▽「喜多屋」喜多屋(同)▽「つくし」西吉田酒造(筑後市)▽「若波」若波酒造(大川市)▽「菊美人」菊美人酒造(みやま市)▽「玉水」玉水酒造(同)▽「国の寿」柳川酒造(柳川市)。焼酎専業の西吉田酒造を除き日本酒メイン蔵。

 飲み比べコーナーに揃えた酒は、日本酒と焼酎、リキュールで43種にも及んだ。1蔵あたり3~5銘柄。抽選券付き有料チケット制で、雄町特別純米生々、しぼりたて純米壽限無などまで1杯100円で楽しめるから嬉しい。一番高い300円では大吟醸酒がズラリ。焼酎やリキュールは大方が100円。それでも大吟醸酒粕焼酎、赤しそ純米梅酒など多彩。酒メニューはそのまま各蔵の造りへのこだわりを映す。

 全出品酒の即売も。食も地のもの。川魚ハヤの甘露煮やエツの天ぷら、海茸粕漬、山太郎蟹、寄せ豆腐、旬のわらび等々。小倉など北九州で愛される名産、青魚のぬか炊きも登場した。芸文館ならでは筝と尺八演奏や花魁(おいらん)道中もあり18時「幕切れ」となった。

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 「幕開け」に先立ち事前参加申込者を対象に「筑後七国酒文化セミナー」を無料で開いた。昨年に続き2回目。歴史や気候風土などの背景、蔵元の現状など伝え飲み比べも。出品蔵元と飲み手をつなぐ場でもある。

 「矢部川と花宗(はなむね)川」からひも解いた。福岡・大分・熊本の3県にまたがる三国山に発し、有明海に注ぐ矢部川。花宗川は矢部川から分流する、戦国末期から江戸初期の灌漑工事で造られた半人工河川だ。両川の流域に9蔵がある。流域は農産物に恵まれ、川は原料搬入や製品運搬に利し酒造業が栄えた。同じ水系の水を使っているわけだが蔵の所在地で水質は異なり、近隣蔵でも酒質は異なる。

 「筑後七国は日本有数の清酒銘醸地帯。地元産の米にこだわって造られた清酒も多く、鑑評会での評価も高い」「筑後七国の焼酎は酒粕を原料とする粕取焼酎が起源…。

 飲み比べでは、清酒は地元の米=夢一献・吟のさと・山田錦・つやおとめ・神力・壽限無=で造ったものを試してもらった。焼酎では麦焼酎(減圧蒸留・常圧蒸留・樽貯蔵)、芋焼酎(紅はるか・黄金千貫)、酒粕焼酎と個性が競演した。