スイスのワイナリーが清酒製造計画 丸本酒造(岡山)が技術提供へ

2019年02月01日

 岡山県浅口市の清酒「賀茂緑」醸造元・丸本酒造(丸本仁一郎社長)は、スイスのワイナリー「ヴィニグマ」社に酒造技術や原料栽培技術を提供し、ヴィニグマ社がスイスで清酒造りを行うと発表した。

 日本酒の輸出量は、毎年2ケタで伸長し、世界各地で「大吟醸」や「純米」などの高品質な日本酒が人気となっている。その一方で、海外では小規模な清酒醸造所も盛んに開設されており、アメリカを筆頭に、メキシコ、ニュージーランド、スペインなど、今まで日本酒に馴染みのなかった国々でも現地資本による酒蔵が誕生している。

 そうしたなか、スイスでは初となる清酒蔵の開業を目指し、ヴィニグマ社のオーナー、ヴァレンティン・シース氏が来日。丸本酒造で酒造りの修行を行い、2年後をめどにスイスで清酒の商品化を目指すという。

 ワイナリーが清酒造りに挑戦するというケースは日本国内でも珍しく、「今後の海外のサケ・マーケットを占う上でも非常に興味深い」(日本酒輸出協会・松崎晴雄会長)という。

 丸本酒造は、〝農産酒蔵〟として、自社田を有し、自前で酒米作りを行う蔵元として知られている。また、有機栽培米にも力を入れており、認定オーガニック酒は高い評価を受けている。

 一方、ヴィニグマ・ワイナリーは、スイス国内に自社畑を有し、バーゼル駅前にあるワイナリーで醸造を行っているが、同社が所有する自社畑は通常のオーガニックより厳しいビオディナミ農法でぶどうを栽培している。

 今回、日本酒とワインの2蔵がアライアンスを組み、互いに酒造技術や原料栽培技術の提供、またそれぞれの市場での新たな販路開拓に向けても取り組むことになり、クラフトスタイルの酒造りが世界的なトレンドとなっているなか、国境を超えた提携を行ったことで、今後の展開が注目されている。

 1月28日に都内で開いた説明会で丸本社長は、「国外での酒造りは、米の問題、米を蒸す際の機械の問題、水の問題、圧搾機をどうするかなど、いろいろ解決していかなければならないことがある。ただ、ヴァレンティン氏のたゆまぬ集中力があれば大丈夫。おもしろいことになるのは間違いない」と話す。また、ヴァレンティン氏は、「私と丸本社長は、手作業に対する情熱が同じ。酒造りの作業、一つひとつが芸術に値する。丸本酒造で酒造りのプロセスを学び、2年後の商品化を目指したい」と話した。

 今春にもスイスのヴィニグマ社で小規模な酒造りを開始。次の冬に再度、ヴァレンティン氏が来日し、丸本酒造で酒造りの研修を行い、2年後の商品化を目指すという。