日本酒造組合中央会 海外インフルエンサー焼酎蔵めぐりツアー開催

2018年12月19日

 日本酒造組合中央会が主催する焼酎蔵元ツアー「JSS Shochu Kuramoto Tour 2018」。著名な海外ミクソロジスト7人を招へいし10月27日~11月2日、中央会「海外業務グループ」マネージャー・井内博美さんらが同行し実施された。

 ミクソロジストMixologistは“混ぜるスペシャリスト”。果物・野菜からハーブまで様々な素材を組み合わせカクテルを作ることで知られる。

 今回来日ミクソロジストの出身はニューヨーク・ロンドン・マドリード・シドニー・香港など。訪問蔵は九州3県9蔵に及んだ。▽長崎(壱岐島)=壱岐の蔵酒造・重家酒造・壱岐の華・玄海酒造▽福岡=天盃▽宮崎=霧島酒造・柳田酒造・京屋酒造・落合酒造場。

 ツアー最後の蔵、落合酒造場(宮崎市鏡洲、落合亮平社長)には奇しくも本格焼酎の日11月1日に訪れた。蔵元は1909年(明治42年)初代落合利平が宮崎市田吉で創業。二代目落合利平、三代目落合一平、そして現四代目落合亮平さん(41)へとつなぎ今日に至る。現地への移転は2007年(平成19年)。

 蔵元がある鏡洲は宮崎市郊外、自然豊かな土地柄。製造のメインは「鏡洲」「赤江」などの芋焼酎。原料芋に契約農家が“緑肥栽培”で育てたものを使うのがこだわりの一つだ。緑肥栽培は動物性肥料を使わず、植物性肥料だけで土壌をつくり行う栽培法で、酒質にも反映されるのだという。「水分が少なく身の締まった固い果肉のしっかりした芋となり、それらを原料にした芋焼酎は口当たりが柔らかで深い味わいになる。芋を育む大地がいかに健全であるか。これが旨い焼酎への答え」との思想がある。目指す焼酎は「日々の料理に供され、食事をより一層、豊かなものへ引き上げる食中酒」。発酵期間を長くとるなどの工夫で味わいを際立たせる。

 そして先代から挑戦を重ねてきたのがショウガをはじめヨモギやピーマンなど野菜を使った焼酎造りだ。米国限定の輸出商品ジャパニーズ・クラフト・ショウチュウ「利平(りへい)GINGER」は減圧蒸留で「清涼な生姜の香り、淡い甘みとキレ鋭いドライな余韻」が特徴。格子柄を表現し和の佇まいに品格も漂うボトルは、ライトアップで一段とスタイリッシュな雰囲気を醸すようデザインされている。ロサンゼルス・インターナショナル・スピリッツ・コンペティション2018ブロンズ賞受賞、パッケージデザイン賞受賞。▽原料比率=大麦50%・米麹30%・生姜20%▽アルコール度数=38%▽容量=750ml。米国内での小売売価は55ドル程度になるという。

 同社に対するジェトロの輸出サポートは強力で、当日も関係者が蔵元とともに視察団一行を迎えた。

 1次は甕仕込み。温度管理でクエン酸生成を抑えめにすることで、酵母に回るデンプンが多くなるという。目指す酒質への最初のステップだ。芋掛け後の2次醪は発酵期間を16~18日と長めにとる。「当社では肉質が固く水分が少ない芋を使うので、経験から発酵の後半期間を長くとることで口当たりがやわらかく刺激のないまろやかなタイプに仕上がる。口に含んだ時に味がふくらむ立体感が出るようなお酒を造っている。食事と一緒に飲む、あくまで食中酒としての焼酎が造りたいので」。芋焼酎は通常2年ものをブレンドし出荷している。「香りが落ち着き料理の邪魔をしない」。

 利平GINGERから芋焼酎まで試飲を重ねた。「アメリカの生姜はピリピリするが、日本のものはそうではないのか」との問いには、1年間寝かせたものを使っていると答えた。シルクスイートや紫優(ムラサキマサリ)など原料芋違いの芋焼酎を飲み比べ。10年貯蔵芋焼酎も。「芋にはホワイト系・パープル系・オレンジ系、食用系など様々。同じ品種でも処理で味が変わる」。ノンフィルター(無濾過)のものは「油を感じる。飲む温度を高くすると味わいにより広がりが出る」。もちろん食中酒に適するのは麹の力によるところが大きい。「1回蒸留で飲めるのは麹を使っているから」。

 父で先代社長の落合一平さんが開発したヨモギ焼酎や、グリーンペッパー(ピーマン)の焼酎にも興味津々。1本の焼酎を造るのにピーマンを10個分ほども使うという。「チーズやピザに合いそう」との声が上がった。

 参加ミクソロジストが蔵元に対し感じたことは「チャレンジをし美味しさを追求している。トラディション(伝統)でありイノベーション(革新)」。利平GINGERについては「ジンジャーは感じるが、それ以上に麹を感じる。そのまま飲んでいただく方が良いのでは。カクテルにはベーシックな芋焼酎の方が良い」と話した。

 同社の多彩な味わいの商品をさらに、ロック・水割・湯割・ソーダ割と飲み方を替え試していく。湯割りは湯が先と勧められると、逆に焼酎を先に注いだもの作り比べた。勢いよく注いだものと、グラスを這わせるようにチョロチョロと注いだもので印象は変わるか。幾重にも表情を変える焼酎に興味が尽きないようだった。

 トーマス・ワンさんの言葉は本格焼酎そのものに敬意を表すよう。混ぜるのではなく、そのままの魅力を引き出す提案をした。「カクテルよりも水割り、お湯割り、炭酸割りなどでお勧めしたい。場面によって合う飲み方があるだろう。焼酎には色々な飲み方があることを教えながら、お客さんに色々自分で実際に試してもらえるようなセット、例えば焼酎と一緒に水やお湯、ソーダ、それから芋チップスなどのつまみや九州の醤油なども揃え実際に自分で実験をしていただくようなメニューが面白い」。

 他の参加者からはボトルデザインについて「もっと造り手の想いが表れているものの方がいい」とのアドバイスもあった。