宮下酒造 糖化装置投資で生産量倍へ

2018年12月20日

【岡山】地ビール「独歩」や清酒「極聖」をはじめ、「ウイスキー」「クラフトジン」まで幅広く総合化を進める宮下酒造(岡山市、宮下附一竜社長)。来年1月末に1億円投資で新たに糖化装置(独シュルツ社製)を導入し、生産能力を倍の600klに高める。ビールとウイスキーの需要増に対応し、両方に使う「麦汁」の糖化・濾過・煮沸の工程を効率化させる。

これまで2つ窯だったため糖化と濾過のあと煮沸を待つ必要があったが、3つ窯にすれば煮沸の段階で糖化を始めることが可能で、機械8千万円に老朽化した建物と配管の工事費が加わる。「ビール」の合間に「ウイスキー」の麦汁を造れるうえ、麦汁の品質もグレードアップする。

「ウイスキー」は、昨年6月のレストラン併設の酒工房「独歩館」新築とともに販売して1300本を完売。今回の機械でつくる製品は熟成を終えて2022年頃の発売となる。

今後も設備投資が不可欠で、単式焼酎蒸留器(2012年)とウイスキー蒸留器ポットスチル(2015年)があるが、来年7月以降に新たにポットスチルを予定。「ノンアルコール」や本格的な「甘酒」など食品系飲料にも対応するため、数年後までにクリーンルームを完備できる瓶詰め機・洗びん機などを検討している。

「独歩館」は1年半で軌道に乗り、イベントも活発化。今年10月6日にはビアフェス「オクトーバーフェスト」を開催して100数十名が来場し、来年は3月2・3両日に初の酒祭り「蔵開き」も計画している。

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宮下晃一専務は、今年について「豪雨など災害が多くビールの季節でもある7~9月が良くなかったが、10月以降は持ち直した」と述べ、来年は「亥年も過去に大規模災害が多く気をつけたいが、景気が良い年でもある」として酒類消費に期待する。

「日本酒」は、「岡山大学」との純米大吟醸や精米50%の雄町純米大吟醸が好評だが、同15%5万円の製品も富裕層が増える「中国本土」に輸出20本が決まり、今後200本へ拡大を見込む。

とくに同国は人口14億人のうち約1割が年収5千万円以上と言われており、高精白で雑味をとった雄町米の高額製品が売れる。1%の高精白など技術の競争が全てではないが、旨みが出て外国人も「中華料理には高級ワインよりあって美味しい」と求めれており、今後も雄町の限界ともいえる7%(精米350時間=約2週間)の製品を売り出す。

12月17日も「紹興市」の関係者が同社を訪れ、現地の「エキスポ」(12万~15万人規模)でシンポジウムのコラボ依頼があった。「紹興酒」「白酒」など本土のメーカー数はケタ違いに膨らんでおり、「日本酒も醸造アルコール添加でイメージが悪かったようだが、今は純米や吟醸を中心に高級酒など良い製品が高く売れる時代になった。ブランド力が必要で、商標登録なども積極化させたい」と見据える。

このほか同社は、「岡山空港」国内線ショップで生ビールのサーバー提供も1カ月前から始まり、好調だという。