「国際学会」機に大学へ焼酎バー出張出店

2019年01月14日

 【熊本】国際学会開催を機に、日本の焼酎文化をPRする“出張焼酎バー”企画が実現した。世界中から人が集まる学会は研究や技術だけではなく、文化交流の場。自然風土歴史を内包した伝統的な酒食に触れる異文化交流が、巡り会った人同士を近づける。本格焼酎文化には九州発信という特殊性まであり、国を越え地球規模で通じる言葉になるのだ。

 昨年12月15日、熊本市西区池田の崇城大学で日本自律学習学会(The Japan Association of Self-Access Learning=JASALジャサル)と全国語学教育学会(JALT)南九支部イベントSUTLF(Sojo University Teaching & Learning Forum)の合同会があった。

 その前日の14日、同大カフェで催された歓迎会に「Glocal BAR vibes」(グローカルバー・バイブス=山下紀幸オーナー、熊本市中央区下通1-5-6アリタビル3階)が出展した。「焼酎が好きになったのはノリさんのお陰」と話す、同大講師で同店常連ブランデン・カーシマイヤーさんの依頼に応えた。先輩常連客、當銘(とうめい)ジョセフさん(熊本市中央区大江「熊本学園大学」海外事情研究所所長)も学会・歓迎会運営者。初企画に想いを込め臨んだ。「九州と言えば焼酎なのになかなか飲む機会がない。初めての焼酎を愉しんでいただける企画にしたかった」。

 Glocal BAR vibesは2015年オープン。オーナーの山下さんは鹿児島県出身。英語が堪能で、焼酎販売業に携わった経験もある。目指すのは「海外の方にも英語で日本人のお客様と同等のサービスを提供するバー」で外国人来店数を伸ばし続けている。九州の焼酎に特化し品揃えは「自ら訪問した蔵元の焼酎」が基本。仕込み体験なども重ね、ネット検索情報には無い「肌で感じた蔵元の想い」を伝える。焼酎通で海外での普及活動が期待されているスティーブン・ライマンさんやクリストファー・ペレグリニさんとも懇意で両者が同店バーテンダーとなってお客さんと交流する企画を打ったこともある。

 今回、多くの焼酎銘柄を持ち込むようなことはしなかった。それよりもダイレクトに造り手の想いを届けたいと熊本県の焼酎蔵元、天草酒造(熊本県天草市新和町)の代表・平下豊さんと共にブースに立った。天草諸島に残された唯一の、海辺の蔵元。蔵をメイン会場に町の魅力を発信するイベントでは“船上焼酎BAR”が企画され山下さんらがガイドを務めている。そこでも「蔵がある風景や背景から造り手を感じてほしい」と呼びかける。

 アピールの時間があり、焼酎の出荷や消費についても伝えた。年間の成人一人当たり「単式蒸留焼酎」消費量(2016年度国税庁統計)の全国都道府県ランキングは①鹿児島22・4l②宮崎19・1l③大分9・7l④熊本9・4l⑤福岡8・0l。東京は3・8l。参加者は九州が焼酎愛飲の地であると知り沸いた。「でも焼酎の出荷量は2007年をピークに減少している。焼酎の未来のためには広く世界へ届けることが必要」と訴えた。

 歓迎会にはピザなどが用意され、天草酒造の3種の焼酎を通じ本格焼酎のメイン原料3種を試してもらった。▽Sweet potato shochu手造り本格芋焼酎「池の露」▽Rice shochu純米焼酎「天草」▽Barley shochu(麦焼酎)特酎「天草」=事前コイン購入制3杯500円。

 参加者の大方が焼酎は初という様子。アメリカ出身のクリスさんは「アメリカでお湯割りは普通のことじゃなく初めてだけど、甘くなくて飲みやすい」と異文化に触れた。ベルギー人女性のエブリィさんは「ビールはベルギー人の誇り、焼酎は日本人の誇り」と焼酎に単なるアルコール飲料にはない深いものを感じたようだった。崇城大学「総合教育センター」講師ロバート・ハーシェルさんは熊本市在住。「地元はむちゃ寒い。だからお湯割り。カルチャーと焼酎は離れない。合わさらないと寂しい」と話した。

 蔵元の平下さんは「焼酎が世界に、人種にも関係なく届くようで楽しい」と対面対話でしか伝わらないことを改めて実感のよう。

 「今もバーにご来店の多くの方が焼酎を飲んだことがない。焼酎という言葉を発していただく、そこから始まる」と山下さん。店から飛び出し行った今回企画の手応えは大きなものだった。「インバウンドの一環ではあるが、大学のカンファレンス(会議等)はどの県でもどの大学でも年に何回かはあるもので、世界各国の方々に熊本の特産品をPRする機会になるだろう。大学側もその地域でカンファレンスを実施する意義を訴えやすく、恒常的に続けることで地域との共存の体制もとりやすい。産学連携で地域を世界に発信出来るイベントになると思う」。

 山下さんには球磨焼酎蔵元訪問を含む「外国人向けレストランバスツアー」ガイド経験も。焼酎のことを分かりやすく愉しく感じてもらうサイト「shochu times」(現http://kumamoto-travel.com/)を今月から本格的にスタートさせる予定だ。