日本ワイン ワイン特区認定のワタリセビンヤード開所(福岡)

2018年03月12日

 【福岡】国家戦略ワイン特区認定で「ワタリセ自然農場」(北九州市若松区有毛1788)が果実酒製造免許を取得し3月3日、同所で醸造所開所の神事が執り行われ、支援者らと共に初の仕込みが行われた。藤田佳三さん(38)と家族で営む、響灘に面すドメーヌ。納屋にタンクなど設備を据え自ら栽培の葡萄で醸す。

 免許は2月26日付け「ワタリセファーム&ワイナリー」(藤田久代表)に対し下付。代表は父で、藤田佳三さんは「充実感があり早く感じた」と振り返った。夢の実現を早めたのが国の特区制度だった。北九州市のワイン特区は2016年10月、国家戦略特別区域諮問会議で認定され、酒税法の特例措置により年間最低製造数量が6klから2klに引き下げられた。2klは750ml換算約2700本。市は地産地消や農産品・食品ブランド化の推進、6次産業化により新たな農業の担い手づくりにもつながると期待する。

 藤田さんは2012年頃から苗木の選定を含めワイン用葡萄の栽培を試行し始めた。13年、赤ワイン用品種メルローの栽培を開始。3年後の16年、福岡県久留米市田主丸町の巨峰ワインに醸造委託し初めて、自ら栽培収穫の葡萄がワイン「ワタリセ・ヴィンヤード メルロー 2016」になった。

 現在は約50aでメルロー、カベルネ・フラン、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブランなどを栽培。将来は1・2haにまで植栽を広げる構想だ。

 この日は昨年収穫し冷凍保存していたメルロー628㎏を使い葡萄の粒を手作業で外す除梗(じょこう)を行った。搾汁率7割で750ml換算600本ほどになるという。今年8月頃の出荷を予定。“ワタリセ メルロー”として自醸初の商品となる。

 「ワタリセ自然農場とワタリセ・ヴィンヤードワインを応援する会」が支援を続けてきた。世話役などで一般社団法人ソシオファンド(北九州市小倉北区)の白石有さん、酒類卸「若松酒類販売」(同市若松区)古賀正知社長、酒小売店「尾池酒店」(同市戸畑区)尾池和久代表らが奔走してきた。クラウド・ファンディングで得た資金は醸造タンクになった。借入を伴う総投資額は非公表。「野菜を作るにしても投資は要る。農家の感覚、農業の枠のなかでのチャレンジ」と自然体だ。

 現在九州7県には約10社のワイナリーがあり、大方が加盟しPR活動を行う「九州ワイナリーの会」がある。