全国新酒鑑評会 酒類総合研究所が記者会見

2017年05月31日

 【広島】酒類総合研究所(広島県東広島市)は5月24日(水)午前、平成28酒造年度「全国新酒鑑評会」の審査結果について製造技術研究会の会場・東広島運動公園体育館(同市)で「記者会見」を開いた。明治44(1911)年の第1回以来、105回目を数え、出品860点(前年比6点増)、入賞437点、金賞242点の今回について詳細を語った。

 審査委員は「予審」45名、「決審」24名で、審査方法として香気成分の「カプロン酸エチル濃度」が近接するようグループ化し、同濃度の低い方から順に審査したが、吟醸香の高低にとらわれず出品酒個々の味、香り、バランスを入念にチェック。「酒総研」では、審査委員への要望として「多様性を重視し、現在主流の出品酒(カプロン酸エチルが高く甘めの酒質)と香味が異なるというだけで減点することがないよう1つひとつ出品酒に向き合った審査をお願いした」と強調した。

 審査委員への同内容は、昨年以前も「言い方は違ったが、主旨として伝えていた」と述べた。午前10時始まりの予定だった「製造技術研究会」については、雨のため開場を30分ほど早めて今年9時半にしたという。

 「総評」として、今年の原料米は溶けにくく(要因として穂が出て実るまでの気温が高いと溶けにくくなる)、「酒造適正予測」記者発表などもしたが、原料処理で苦労した製造場もあった。近年、コメの溶けやすさや気候変動が大きいため、「例年という言葉が通用しにくくなっている」とも説明。「出品酒」については、カプロン酸エチルは前年度より低く(コメの硬い年の傾向)、コメが溶けにくく醪の溶解が抑えられたことから「全体的にきれい」な酒質になったが、「味が薄く膨らみが足りない」ものもあったという。

 溶けにくいため平成24酒造年度以来の高い「粕歩合」(速報値46・8%、昨年40・6%)で、コメが溶けにくいと甘味が減り、渋味や苦味が出やすくなるが、今回の同指摘数は前年とほぼ同じで、「グルコース濃度」(速報値で2・3ほど)、「日本酒度」もほぼ同じ。全体として甘味を特徴とする酒質だったと述べた。「カビ臭」の指摘数は減少したが、十分発酵していない醪にアル添をしたり早く搾ったりした際に出やすいオフフレーバー「アセトアルデヒド」「ジアセチル」は多く指摘されたという。

 今回の記者発表資料の末尾に載せた「都道府県別」出品・入賞・金賞の各点数一覧については、「こうした資料を出すのは良くないとの議論もあったが、今回はつけた」と説明。今後も検討するとし、「各県が切磋琢磨して技術を伸ばすのは良いが、県同士の競争のようになるのは避けたい」とも言及した。今回、記者会見は、空前の日本酒ブームもあって多数のメディアが参加する様子が伺え、質問も多数あった。