瑞鷹(熊本市)で飲食店関係者が杉玉づくり

2017年02月09日

 【熊本】1月29日、清酒蔵「瑞鷹(ずいよう)」川尻本蔵(熊本市南区川尻4丁目6番67号)で杉玉づくりが行われた。集ったのは熊本市内外の飲食店5店・酒販店2店の関係者ら約20人。熊本地震後、初の酒造期を迎え無事新酒を醸出。復興へ新たな歩を進める決意が、造り手と売り手によって籠められた。

 市内で無濾過生原酒専門日本酒バー「醸音(かもね)」を営む池田朋弘さんの呼びかけで実現した。自身2009年のオープン以来毎年、個人的に杉玉を作ってきたが、これだけ大人数では初の試み。「震災後、復興のため募金したが、その貴重なお金を熊本の日本酒文化を広めることに役立てていただきたいと思うようになった」という。その一つが杉玉づくり。「新酒が出来た単なるお知らせではなく、感謝の印であるはず。日本酒の話題が増えている今こそ、ちゃんとした日本酒の文化を伝えていくことが大切」との思いを強める。

 参加者は芯となる骨組みを針金や金網で作り、そこへ丹念に杉の枝葉を刺し続けた。飲食店経営の男性は「おもしろいけど本当に大変。でも時間をかけることで神様への感謝の気持ちも深まっていくように感じる」と話した。参加全店の店に飾られることになる真新しい杉玉。酒を語る言葉にも一層熱が籠ろう。

 用意された緑葉は蔵元の常務取締役・吉村謙太郎さんらが厳寒の山に入り採ってきたものだ。被災の蔵から下した杉玉は当然、茶に色あせている。この日ともに作業を進め丸く刈り上げると「やっと緑の杉玉が出来た」と清々しい表情になった。

「地震後は皆さんのお世話になってばかり。有り難いし復旧復興の力にしなければ」と言葉を重ねた。

  ◇  ◇  ◇

 清酒「瑞鷹」をはじめ「東肥赤酒」や本格焼酎も醸す瑞鷹㈱(吉村浩平社長=熊本県酒造組合連合会会長)の創業は1867(慶応3)年。今年、誕生から150年を迎える。熊本地震で木造土壁づくりの蔵が甚大被害に見舞われたが、昨年6下旬以降、赤酒の出荷を再開。10月からは清酒の仕込みに入り、11月上旬には1本目の新酒を無事上槽している。

 例年3月に企画してきた大々的な蔵開放イベント「川尻の酒蔵まつり」の継続開催は難しいのが現状だ。それでも今年は3月5日、瑞鷹西門一帯で「瑞鷹新酒蔵出し市」と銘打った、しぼりたて新酒の販売会を開く。