石鎚酒造>2017酒造りなと゛動向

2017年02月09日

 【愛媛】四国の有名酒造メーカー「石鎚酒造」(愛媛県西条市)は、東京オリンピックが開かれる2020年にちょうど創業「100周年」を迎える。高品質で品薄になるなど全国から人気がある銘醸蔵。この3年間をチャンスに今後ラベルなどフルモデルチェンジも計画。「石鎚らしい食中酒で商品構成を特化させたい」とさらなる飛躍をめざす。兄弟で酒造りに取り組む越智浩専務と稔製造部長に話を聞いた。

 同社は、「定番」と「季節製品」を主に業績も順調。全体的な日本酒のムードは悪くないが、「前向きに提案型・挑戦型の姿勢でいきたい」と一段と気を引き締める。

 「前期」27BYは期間中、6月下旬までにタンク80本を生産(甑倒し5月)。「出品酒」は愛媛県や全国の鑑評会はもちろん、IWCや東京の有名酒販店「はせがわ酒店」のコンペなどで賞を総なめ。「量を増やしても品質が落ちないことを証明できた」と自信を深める。

 「出荷量」は、毎年10%ずつ(約100石)増えて現在の総出荷量は約1200石。各小売店や県庁などの後押しがあり、全体のうち海外も同様の伸び率で好調だ。

 「今期」28BYは、期間中の5月中旬までに90本を生産予定。原料米の不良がいわれるなか、持ち前の技術力でカバー。「いまのコンペはグルコースがないと厳しい。今年は純米酒も酸がありながらその辺を上手に表現したい」と製品設計を重視する。

 こうした品質への姿勢が実を結んで評価され、最近は「純米大吟醸酒」が羽田・成田「JAL国際線ファーストクラス」ラウンジで使われ、720ml600本を出荷。クレジットカード会社なども通じてセレブ富裕層のほか、新規飲食店からも契約要望が相次いでいる。

 国の補助金などを活用して設備投資も積極化。3年ほど前から「麹室」に加え、今期は「サーマルタンク」「分析機器」「クーリングユニット」、空気清浄のプラズマクラスターなども充実。来年はさらに酒母室や搾り機(現在は槽2基)の拡充を計画している。

 家族4人と従業員2人の計6人で生産活動にたずさわっているため、省力化や機械化など細部まで気を配り、「振動式密度計」も導入して成分測定の安定化に努める。

 昨年は、越智専務が「愛媛県酒造組合」の理事長に就任し、「製造技術委員会」のトップも兼ねながら県産酒全体の需要振興に意欲を見せる。

 「県全体で意欲を高め、愛媛の酒のイメージ・産地形成をつくる。統一銘柄のマールなどは発展的に区切りをつけ、原料米も松山三井だけでなく今後全農の協力なども仰ぎながら『しずく媛』を増やす」と力強く語ってくれた。