ビール酒造組合・滝本専務が会見

2017年02月08日

 【東京】ビール酒造組合の滝本修司専務理事は1月26日、記者会見を開き、今年の活動方針などを話した。平成28年は、ビール類3ジャンルとも前年を下回り、ビール系飲料合計では525万1000kl(97・6%)となり、滝本専務は、「市場を取り巻く環境は厳しいが、ニーズに応える商品開発、新たな価値提案などを通じて需要振興に努めていく」と話した。

 今年、要旨次の活動に注力していくと述べた。

 (1)ビール需要振興策

 若者のビール離れが進んでいると言われている現在、ビールを通した“本音のコミュニケーション”の大切さに気付いてもらうために、昨年7月13日に「BEER TALK」を発表した。スペシャルWEBサイトを開設し、「本音で語る」シーンに寄り添うさまざまなコピーやグラフィック、WEBムービーを展開した。このWEBサイトへのアクセスは、12月末時点で40万ページビュー、30万を超えるユニークユーザーを記録し、好調に推移した。

 (2)公正取引の推進

 「ビール製造業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」、「ビールの表示に関する公正競争規約」の適正な運用に向けて昨年は全国9か所で合同支部調査員会を開催した。今年も全国9か所で合同支部調査員会を開催予定で、規約の適正な運用、市場実態の把握に努めるとともに、6月に施行される「酒類の公正な取引に関する基準」の適正な運用にも取り組んでいく。

 (3)税制に関する活動

 ビール系飲料の市場は平成6年をピークに年々減少し、この20年間でピーク時の4分の3まで減少した。ビール系飲料の総需要を回復するためにも、ビール・発泡酒・新ジャンル商品に課せられた酒税の大幅な減税はビール業界にとって最重要の課題だった。平成29年度の税制改正に向けて、発泡酒の税制を考える会とともに「ビール・発泡酒・新ジャンル商品の酒税に関する要望書」を作成し、ビール系飲料の酒税の減税要望活動を行った。

 平成28年12月8日に発表された平成29年度与党税制改正大綱では、ビール系飲料の酒税改正の工程が明確になり、平成38年にはビール系飲料の税額が1kl当たり15万5000円に統一されることとなり、ビール酒造組合としては、今回の大綱でビールの大幅な減税が示されたことは大きな前進と捉えている。

 (4)適正飲酒に対する取り組み

 WHOの「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」、「NCD予防のためのアクションプラン」に示された内容に対応するため、IARDの賛助会員として会員各社と連携して活動を進めていく。

 国内では平成28年5月に閣議決定された「アルコール健康障害対策推進基本計画」で取り組むべき重点課題の一つとされている「飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防」の中で、特に配慮を要する者とされている未成年者、妊産婦、若い世代への教育・啓発をより一層進めていく。

 「STOP!未成年者飲酒」プロジェクトや「未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校賞募集キャンペーン」の取り組みを継続するとともに、未成年者飲酒防止の教育支援ツールとし「ビールすごろく」を新たに作成。全国の小学校・中学校・高等学校、約3万8000校へ11万6000部配布した。また女性の適正飲酒に向けた取り組みとして、女性向けの適正飲酒啓発セミナーやスマートフォンアプリ「妊婦手帳」を活用した妊産婦飲酒防止に向けた啓発活動を継続する。

 (5)物流効率化

 「一般社団法人Pパレ共同使用会」の加盟社は、平成25年3月発足当時の60社から99社となった。Pパレの出荷枚数は、加盟社増や加盟社飲料部門の出荷好調などにより、平成28年年間で約4300万枚となり、発足当時の出荷枚数との対比で109%となった。Pパレの管理回収活動に重要な役割を担っている卸売事業者の協力をより強固なものとしていくため訪問活動などを通じて共有した課題に対応していく。また、不正使用防止啓発活動や不正使用業者への法的手続などの活動をより強力に進めていく。

 (6)環境への取り組み

 経団連の環境自主行動計画と低炭素社会実行計画に参画し、廃棄物対策目標、二酸化炭素削減目標を掲げ、取り組んでいる。低炭素社会実行計画では、ビール業界の2020年目標を二酸化炭素排出量51万1000トンとして取り組みを開始しており、2015年度の実績は47万3000トンと、3年連続で2020年目標を達成することができた。

 また、2030年目標については、ビール業界の目標を46万3000トンと策定しており、引き続き削減に取り組んでいく。「環境自主行動計画 循環型社会形成編」は、加盟社全ビール工場で発生する副産物や廃棄物の、再資源化を徹底し、2000年より再資源化率100%を継続している。

 (7)国際技術委員会(BCOJ)

 魅力的な商品の開発、美味しさの実現、安全の確保等に関する技術を高めていくために、BCOJを設置し、米国および欧州各学会の分析委員会への参加、加盟社協同での分析法の開発・学会発表を行っている。BCOJ年次大会では、国内外の技術者同士の交流を進めながら、ビール醸造技術・分析技術の向上に引き続き取り組んでいく。

 (8)安全・安心への取り組み

 原料である大麦・ホップから最終製品にいたるまで、品質の向上と安全性の確保を重要課題の一つとして捉え、活動している。食品表示法は5年間の経過措置中だが、変更が必要な表示内容について検討を進めていく。

 また、2016年は消費者庁と農林水産省の共催による「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」で、酒類を含む全ての加工食品について原料原産地表示の方向性が中間とりまとめとして示された。現在は、具体的な表示内容やその時期について、検討を進めている。