熊本地震関連 県下清酒蔵 9億円余りの補助金申請

2016年08月03日

 【熊本】「酒造業界は10月からの本格的酒造期を控え、施設・設備の復旧が喫緊の課題である」――。熊本県内の清酒・赤酒製造者が加盟する熊本酒造組合(吉村浩平理事長)メインの組織「同組復興グループ」(11社、うち10社清酒・焼酎等製造<うち2社赤酒製造>)が7月21日、「熊本県中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」に基づく復興事業計画を県へ提出した。同月22日の1次申請締切に対応したもの。事業費は12億2711万円、補助金申請予定額は9億2031万円に上った。復旧整備等の完了予定日は平成31年3月31日。グループ補助金は東日本大震災でも効果的支援となっただけに、熊本での復興にも大きな弾みがつきそうだ。申請認定の通知予定は8月下旬。

「グループ施設等復旧整備補助事業」は被災被害があった施設と設備を対象に、復旧事業費の4分の3(国1/2、県1/4)を補助金拠出するものだ。

 グループの属性は“地域の基幹産業集積型”。「共通して用いる熊本酵母はその優れた醸造特性により全国の酒蔵で用いられ、熊本県が全国でも屈指の銘醸地であることを証明している」。構成員中、熊本酒造組合員・清酒10蔵は、▽「瑞鷹」瑞鷹▽「通潤」通潤酒造▽「香露」熊本県酒造研究所▽「千代の園」千代の園酒造▽「れいざん」山村酒造▽「花の香」花の香酒造▽「亀萬」亀萬酒造▽「蓬?」河津酒造▽「美少年」美少年▽「和田志ら露」室原。被害の程度により各社の事業費に多寡がある。補助金は後払い。実際に工事等が行われ決済後に支払われる。

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 今回の申請事業費は、商品破損等を除く施設・設備の直接被害額と言えるものだ。東日本大震災では、宮城県酒造組合の場合、組合員16社が申請。15億7千万円の事業費で、11億8千万円の補助金を受けている。

 震災後の熊本県産清酒の出荷動向(課税移出量・前年同月比)は、▽4月=99%(県外123%)▽5月=118%(169%)▽6月 集計途中 =113%(157%)。

 復興への取組としてはこれまで、商品に“がんばるけん熊本”首掛けを施すキャンペーンを展開しているほか、球磨焼酎酒造組合とも連携したPR活動を始めた。組合関係者からは、今年10月、「華錦(はなにしき)」仕込みの日本酒を一斉披露するイベントを、復興への大きな足掛かりにしたいとの考えも聞かれる。「華錦」は初の熊本県オリジナル酒米で、3年後には6000俵購入の計画があった。

 今回の申請書「復興の必要性」では以下挙げた。①国税でも重要な位置を占める酒税を納税するグループであり、国税収入の確保の観点からも必要性大②構成員の製造する日本酒は熊本県下の製造量のほぼすべてを占め、復興出来なければ熊本県下での清酒製造は壊滅する③赤酒は日本国内の全量を賄っており、代替性がきわめて限られているため料理店、家庭における日本料理に大打撃となる。熊本県下の鰻(うなぎ)店はタレにほぼ赤酒を使っており、赤酒の復興がなければ店を閉めるとの声も上がっている④原料として県産米を大量に使用しており、しかも価格的にも食用米より高価格で買い取っており県内農業への貢献度は高い⑤販売先の県内卸売・小売業者は差別化製品、利益商品として県産酒を扱っており、酒類流通業者への貢献度も高い⑥酒蔵開放は各地域の目玉集客イベントとして、地域観光に不可欠なものとなっている⑦グループ構成員は県内各地の中核企業であり、雇用・納税・地元商店からの仕入れ等で大きな役割を果たしている。また老舗企業として各地域の商工会議所・商工会・観光協会等、経済団体の会長や幹部を歴任している。復興は酒類業界だけではなく県下全域の復興にもつながっていく。

 赤酒(雑酒)

 「灰持酒(あくもちざけ)」の一種。原料はうるち米で、製造工程も清酒とほとんど同じだが、保存性を高めるため醪に木灰を入れる点で異なる。また糖分やアミノ酸が反応し赤色を帯びる。

 熊本では江戸時代、御國酒(おくにざけ)として赤酒の製造しか許されなかった。西南戦争以降に県外清酒が流入するが、今日に至るまで変わらず、屠蘇酒や郷土料理に欠かせない調味酒として県民に愛され、熊本の酒・食文化において大きな位置を占めている。

 現在、瑞鷹(熊本市南区)と千代の園酒造(熊本県山鹿市)が製造販売している。