麒麟山が新貯蔵棟を新設

2016年07月22日

 【新潟】麒麟山酒造(東蒲原郡阿賀町、齋藤俊太郎社長)は新貯蔵棟「鳳凰蔵」を新設し、7月9日に竣工披露式典を開催した。

 「鳳凰蔵」は同社本社および製品部の裏手に建設され、延べ床面積は2090㎡で鉄骨2階建ての構造となっている。建設費は約10億円。

 1階には3kl、5kl、7・5kl、10kl、20klのタンクを56本設置し、個々のタンク毎に温度管理ができるシステムを導入した。また、新たに温水熱交換方式の火入れ殺菌装置も導入し、安定した酒質を保つことが可能となった。

 2階部分には10klの貯蔵タンクを12本設置。今後の貯蔵数量増を見込み、52本のタンクを増設できるスペースも設けた。
 同社の平成27年度の出荷数量は約5500石(市販酒換算)となっている。次期造り(平成28BY)から新貯蔵棟で吟醸、純米、本醸造クラスを約3300石(同社出荷数量の61%)貯蔵し、残りを現在の製造部で貯蔵する予定となっている。

 タンクを最大限増設した場合、約5500石の増産が可能となり、将来的には1万石以上の出荷体制が可能となる。

 同社はこれまで、製造部と製品部が離れている関係上、製造部で仕込みを行い割水した後、約800m離れた製品部へローリー輸送し、瓶詰めを行っていた。

 「鳳凰蔵」稼働後は新酒濾過した後、ローリー輸送を行い「鳳凰蔵」で火入れ、貯蔵し、パイプラインから直接瓶詰ラインへ送ることが可能となったことから、アルコール度数が下がるために品質面での懸念があった割水後のタンクローリー輸送の課題が解決されることとなった。

 また、同社のアイテム数は15年前に比べ約2倍に増えており、旧来の貯蔵施設では適切な貯蔵環境が構築できなくなっていた。「鳳凰蔵」では小容量タンクも多数導入したため、多品種の商品に対応できるようになった。

 これに加え、各種容量のタンクを導入することにより、端桶が出にくい構造となり、より一層、品質の安定も期待できる。また、さまざまな製品の製造も可能となり、今後は試験醸造など活発な商品開発が予想される。

 齋藤社長は式典のあいさつの中で「約4年半前に建設の計画をスタートさせた。完成まで長い年月がかかったが、理想とする貯蔵環境が出来上がった」と喜びを語った。

 「鳳凰蔵」の名称は、中国の霊獣である「鳳凰」にちなんで命名された。「鳳凰」は同社の名前にも入っている「麒麟」と対になる存在で、相性が良いとされており、中国神話では吉兆の証となっている。「鳳凰蔵」新設を機に、同社の製造部も「麒麟蔵」へと名称を変更した。

 齋藤社長は「この投資を機に県外、特に関東圏での販売を加速させ、海外への需要にも応えていきたい」とした上で「ただ、当社はこの地で生まれ、地元の人々に育まれてきた。地酒とは地元で愛され、暮らしの中で必要とされるものであるべきだと考えている。地域の人たちの声に耳を傾け、これからも地元・新潟の人にうまいと言ってもらえるような日本酒を造っていく」と意気込みを述べた。