「北九州酒仙の会」(本部・ひらしま酒店) 「金賞酒」の会

2016年07月14日

 【福岡】4時間にもわたり、きき酒と座宴で「金賞酒」にどっぷり浸る濃密な酒会――。「全国新酒鑑評会『金賞酒』とひらしま酒店『オリジナル酒』を楽しむ会」が7月3日、北九州市の北九州八幡ロイヤルホテルであり約200人の日本酒ファンで沸き立った。

 「全国地酒処・大蔵ひらしま酒店」(平嶋洋一郎代表、北九州市八幡東区羽衣町22―10大蔵小学校横)を本部とする「北九州酒仙の会」(髙田秀晴会長)が主催するもの。

 金賞酒(受賞酒・受賞同等酒)は会で買い上げる。全国の蔵元が協力のもと、今年は29県74銘柄が揃った。ひらしま酒店オリジナルの日本酒は5県16銘柄。開場を待ちわび参加者の出足は早い。吐きを重ね次々と飲み比べていく人、呑み空け心酔の度を深めていく人など様々。女性や若年者も多く大いに感性を揺さぶられているようだ。憧れの酒と出会い、別格の香りや味について友と語らう。恋焦がれる酒の撮影も忘れない。高ぶる熱気は半端じゃない。

 さらに以下13蔵元が参加。ブース出展し一押し酒のきき酒を勧め、味わいについて説明したり、質問にも応じ交流を深めた。懐かしの再会を喜び合うような場面も。ある蔵元は「九州はハートで来てくれるから本当に好き」と話した。▽出羽桜(出羽桜酒造)山形県▽東北泉(高橋酒造店)同▽一ノ蔵(一ノ蔵)宮城県▽乾坤一(大沼酒造店)同▽朝日山(朝日酒造)新潟県▽雨後の月(相原酒造)広島県▽亀齢(亀齢酒造)同▽五橋(酒井酒造)山口県▽司牡丹(司牡丹酒造)高知県▽天衣無縫(喜多屋)福岡県▽三井の寿(みいの寿)同▽磯自慢(磯自慢酒造)静岡県▽十の風(澄川酒造場)山口県。

 乾杯はオリジナルブランドの一つ「電光石火」の仕込水。音頭をとった宮城県「乾坤一(けんこんいち)」醸造元、大沼酒造店の大沼充社長はまず、熊本地震被災へ思いを寄せた。「応援するので気落ちせず進んでほしい」。30年を迎えた会へは金賞を獲ることで会へ参加できる喜びを語った。「今は全国の蔵元が多種多様なお酒を造り楽しんでもらっている。ただブームの裏には下る危機感がある。お酒をご理解いただける方が益々増えるよう皆様の応援をいただきたい」と一層の愛飲、さらにその広がりへ期待を寄せた。

 同会会費は前売のみ1万3000円。特別な酒会として凝った料理でもてなす座宴にこだわる。金賞酒を含め出品酒を自卓に据え楽しめ、残酒もすべて持ち帰ってもらう。毎回買上げ酒にはたっぷりの量が必要だ。

 酒宴では参加蔵元を含め、皆卓につき語らいに花を咲かせる。ここでも蔵元から、会が金賞獲得を目指すモチベーションになっているとの話が聞かれ、ひらしま酒店の品質管理の徹底を称える言葉もあった。「とにかく皆さんと一緒に楽しみたい」と一つになり大らかに酌みあかした。

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 昨年の出品酒リストの表紙には「歩」の一文字。「いい酒、いい人との出会いを大切に」地酒愛飲の和を広げてきた。

 酒会の運営をボランティアで支える「北九州酒仙の会」は昭和56年開会「ひらしま酒店地酒を楽しむ会」を前身とし、昭和60年、愛飲家や飲食店関係者などで正式発会した。いわば草の根の活動で日本酒の愛飲普及や飲食店啓発を推進してきた母体で、諸種の酒会も企画している。

 節目の今回は、酒仙の会三十周年記念酒・限定吟醸「電光石火」を皆に贈った。裏ラベルに「コーディネーター・平嶋雄三郎」とある。取組は亡き店主から継がれたものだ。そして今年は「結」。酒縁をはぐくみながらの30年。飲み手と造り手が心を結ぶ会となった。