全九州卸協議会 総会

2016年06月24日

 【福岡】全九州卸売酒販組合協議会の第55回通常総会が6月9日、福岡市の八仙閣であった。九州7県の卸組合役員が市場問題等に関し意見交換するもの。「南・北九州ビール市場問題協議会」開催など平成27年度事業、28年度収支予算案などの議案を可決承認したほか、任期満了に伴う役員改選を行い、本村康人氏の辞任で空席だった会長に、今泉三千俊氏(福岡県卸酒販組合理事長、今泉酒類販売)を選出した。協議では各県から、熊本地震の直接的被害および業務用販売の大幅減など二次的被害が報告された。来年以降、県単位九州7つの組合が合併により南北2組合へ統合される予定で、年に1度全県の卸事業者が参集する「全九州卸売酒販業者大会」は、今年の第60回宮崎大会を最後に中止することを決めた。

 開会あいさつで熊本県の池田正三郎副会長は「早く熊本地震の終息宣言が出て人の動きが戻ってほしい」と語るとともに、酒税法等改正法の成立やアルコール健康障害対策推進基本計画の策定、組合合併に触れ「一つの大きな変革期に差しかかって来ている」と環境変化を指摘した。

 九州7県卸組合員数は93者(平成27年9月現在)。▽福岡=30▽佐賀=5▽長崎=7▽熊本=23▽大分=8▽鹿児島=6▽宮崎=14。

 「全九州卸売酒販業者大会」の中止案は以下理由から上程された。①60回の節目②今の時代にマッチしていない③広域にわたる大会開催は九州地区だけ④厳しい経営環境で卸組合員が減少⑤北部九州では来年1月、南部九州では4月の合併へ向け取組が進行している。大会継続なら2組合が1年おきに主管することになり開催費用のねん出が難しい。意思疎通の場を無くすことなく「より中身の充実したものへ変えていきたい」と付言された。議長の光冨英造副会長は「一つの役割を終え、新たなスタートを切る」と中止を前向きに捉える発言。矢野善紀理事から「市場が広域化しているから、顔を合わせる当役会のようなものを考えていかねば」との意見があった。

 市況等について各県から以下報告された。

 ▽熊本=地震が起きた今年4月の卸販売量は前年同月比、全県で80%、市内に限れば60%。震度1以上が1600回を超え、いち早い終息を願う。観光客のキャンセルが相次ぎ、総会やイベントが延期され、飲食店への客足も戻っていない。市場軟化傾向は続いたまま。地震があり、あらためて経営基盤強化の必要性に強く思いを寄せている。

 ▽鹿児島=二次被害は大きい。観光地でのキャンセルが相次ぎ、指宿での当社販売は30%減。九州は一つ。熊本を支援しながら地元も盛り上げていきたい。既存酒販店の廃業が多く、県内卸の納入率は下がっている。東京で、福岡で決まったからと厳しい価格要請もある。コスト削減で何とか利益を残しているが、酒税法等改正法で利益の取れる市場環境にもっていければ。

 ▽大分=湯布院、別府で風評被害。開店休業状態に悲鳴が上がっている。人手不足による人件費高騰、震災被害、少子高齢化のトリプルパンチ。合併のことを心配していたが、熊本県が最後までやり遂げるということで有難い。震災で全九州の卸は財源不足になるのではないか。中央会には賦課金免除の検討を願いたい。

 ▽宮崎=熊本城がライトアップされ、復興の明かりが灯ったと思った。県北の高千穂町で一部被害があっただけだが、県内では宿泊客のキャンセルが相次いでいる。1月からの累計卸販売量は4・8%増で、本格焼酎がけん引している。

 ▽福岡=新ジャンルの価格はドラッグ系でほぼ600円。以前より実質的に安くなる状態が続いている。廉売に関する公取への申告は、昨年度が307件で、注意が217件。今年度はこれまでに申告130件で注意118件。不問が減り注意が増えている。地震の影響だろう。4月以降業務用の数字が悪い。福岡ではインバウンド効果があったが、街中で外国人客の姿が減り、大震災の影響は大きい。飲んではいられないような風潮もあり、回復はなかなか難しいのではないか。今は全九州我慢の時。

 ▽佐賀=地震影響で業務用が悪い。秋の修学旅行のキャンセルが相当あり、九州から離れていっている。依然、低値安定。Tがオープン3日間限定でポイント10倍。これが許されるのか。生産価格が安く、リベートも付いての事だろうが、販管費が出るのか。局で調べてほしい。

 ▽長崎=当社の熊本支店は、前震でラックから商品が落ち、本震でラックごと倒れた。被害は3000万円。熊本の社員は家にも帰れず、精神的ショックが大きく、心のケアをしていかねば。今やプライスリーダーはドラッグストア。ここが上がらないと量販も上げられない。酒税法等改正法で、卸は小売にこの価格以下で売ってはいけない、小売は消費者や飲食店にこの価格以下で売ってはいけないというようにしていかねば。自社でしっかり利益の取れる価格設定をしていきたい。酒類業は胃袋産業。人口減や高齢化で胃袋は小さくなる状況で、量から質へ転換、利益の取れる商品を売っていきたい。長崎県産酒で乾杯条例が施行しており、ビールより県産酒を売ろうとしている。

 光冨議長は「震災影響をオール九州として捉え、全国へ九州産の商品をいかに売っていくか。九州の卸がパイプ役となる、その取組の中心的役割を組合が果たしていければ」と総括。市場環境の是正へ強い意志を示した。「風下の圧力は強いが、改正法のチャンスをしっかり捉え適正な利益が取れるよう、明るい未来が取り戻せるよう手を携えていきたい」。

 全国卸売酒販組合中央会・齊藤一常務理事は中央情勢を報告した。免許制に関し「需給調整上、問題がある最低免許枠制度の廃止を求めていく」方針を示し、「店頭販売」特殊免許が「免許枠が無い青天井」だと問題視した。

 取引実態調査の結果も提示。酒税法等改正法で財務大臣が定める「公正な取引の基準」については、「新指針に法的拘束力を持たせるもの」との認識で、公正取引環境実現への実効を期待する一方、「両刃の剣になりかねない」とその内容を注視するスタンスを示した。設定にあたっては業界から十分に意見聴取を行うよう求めた。アルコール健康障害対策基本法に関する説明もあった。

 中央会は現在、全国の組合員に熊本地震復興支援の義援金拠出を要請している。

 新役員 ▽会長=今泉三千俊(福岡県、新任)▽副会長=池田正三郎(熊本県、留任)・光冨英造(長崎県、留任)・永吉孝(鹿児島県、新任)