第1四半期のビール類出荷 新ジャンルの低迷も影響

2016年04月22日

 ビール業界がまとめた平成28年1―3月累計(第1四半期)のビール類(ビール・発泡酒・新ジャンル酒類)の課税出荷数量は102万1463klで、前年比3・8%の減少となり、1―3月期では1992年の統計開始以来最低を示し、2年連続で前年を下回った。マイナス要因としては、消費者の嗜好多様化による他酒類への移行とキリンビール社の低迷などが影響したと見られる。一方で、ビールの缶や家庭用については前年を上回っており、ビール離れに歯止めがかかりつつある。

 第1四半期のビール類の課税出荷数量は102万1463klで、昨年の106万1604klに比し、3・8%の減少を示した。ジャンル別の累計は、▽ビール=49万8112klで1・1%減▽発泡酒=14万8084klで11・1%減▽新ジャンル酒類=37万5267klで4・2%減――となり、いずれも減少を示した。

 マイナス要因としては、消費者の嗜好多様化による他酒類への移行が継続している。特に新ジャンルに関しては、「いまやチューハイ類やハイボールが競合アイテム」と指摘する声も多く、主に家庭用ではそれらに数字を取られている部分が大きい。また今期に関しては、キリンビール社の低迷の影響も大きい。他3社が同期で前年プラスを示す中、キリン社のみ減少という残念な結果を示した。同社では要因について、「昨年の『のどごしオールライト』発売の反動と『のどごし生』リニューアルに伴う出荷拡大の影響でマイナスになった」とコメントしている。

 その一方で明るい話題なのが、家庭用でのビール好調だ。ビール類全ジャンルがマイナスを示す中、ビールの缶合計および家庭用については前年を上回っている。各社のビール事業に対する積極的なマーケティングが功を奏した形となった。

 ビール酒造組合の発表によると、ビールの容器別販売動向の1―3月累計前年比(構成比)は▽びん=6・6%減(19・4%)▽缶=2・9%増(41・9%)▽樽・タンク=2・1%減(38・7%)――で缶容器が増加。また用途別販売動向(構成比)は、業務用が3・1%減(52・4%)、家庭用が1・3%増(47・6%)を示した。

 発泡酒の税制を考える会の発表によると、発泡酒の容器別販売動向の1―3月累計前年比(構成比)は▽びん=41・8%減(0・3%)▽缶=10・8%減(97・2%)▽樽・タンク=15・0%減(2・5%)――でいずれも減少。また用途別販売動向(構成比)は、業務用が16・5%減(3・1%)、家庭用が10・9%減(96・9%)を示した。

 また、同会が発表した新ジャンルの1―3月累計課税出荷数量によると、「その他の醸造酒(発泡性①)」は9万6283kl、10・8%減を示し、「リキュール(発泡性①)」については27万8984kl、1・6%減となっており、両タイプとも減少した。

 1―3月のビール類は、全ジャンルでの低迷が影響し、2年連続のマイナス着地となった。季節・気候を考慮しても厳しい結果となった。その一方で、ビールに関しては良い風が吹きつつある。ビール各社もここ数年の施策で、税制改正も視野に入れたビールへのテコ入れを強化しており、ビールへのシフトで利益向上への期待も高い。また、各社が展開するクラフトビール事業に関しても、ビール類全体の中でのシェアは1%に満たないが、今年からビール各社が本格稼動の年を向かえ、そのシェア拡大が確実視されている。今後、家庭用を中心にビールの需要はさらに高まることと思われる。一方でその反動ともいえるが、新ジャンルはさらに厳しい状況と予想される。依然景気が低迷する中で、低価格という商品価値が再評価されるか注目が集まる。