焼酎文化・いもづるの会、食文化の宴

2015年12月17日

 【鹿児島】郷土文化に地元の酒食は欠かせない。その地の恵みを堪能するのが「食文化の宴~新作郷土料理と本格焼酎を楽しむ会~」だ。20年近くにわたり、鹿児島県内の地域を巡るように焼酎を揃え、有機野菜等を生かした献立でもてなす。11月17日、鹿児島市の鹿児島東急REIホテルで第17回が開催され、会費制で約130人が参加。豊かな酒縁も結んだ。

 「焼酎文化・いもづるの会」(鮫島吉廣会長=鹿児島大学農学部客員教授、元・同大農学部附属焼酎・発酵学教育研究センター長、今村忠男事務局長=鹿児島市「武岡酒店」社長)が、「かごしまの食を語る会」「かごしま有機生産組合」と共に主催するもの。いもづるの会は平成13年3月の発足以来、鹿児島焼酎文化の深耕普及を目指す草の根運動団体。会オリジナルの芋焼酎を、百貨店を含む全国約120店の小売店が販売することでも知られる。

 主催者の願いは一つ、「郷土の食文化の向上」。そのために「伝統食の見直しや食材の開発、特色ある郷土の食材にこだわった料理をはじめ、焼酎など伝統文化の維持・向上に努める」。その活動の一環が酒食コラボ提案の宴だ。“伝統文化の精髄”薩摩焼酎(芋焼酎)を県内・大重谷の自然水で前割りしたものを黒ぢょかで燗付けし酌み交わす。

 「鹿児島県酒造組合」協賛のもと、今回の薩摩焼酎は3地域(種子・屋久、鹿児島、指宿)17蔵の代表ブランド商品が揃えられた。開宴前には個々の焼酎の試飲を通じ蔵元ごとの個性に触れる。トンネルで3年以上貯蔵熟成させた「いもづるの会」オリジナル秘蔵古酒も登場。武岡酒店の故・今村茂吉さんが焼酎ブームの最中、平成16年に始めたものだ。芋焼酎なら何でも売れる「半狂乱の焼酎ブーム」で「鹿児島の焼酎文化が失われてしまう」ことを恐れ、便乗の酒類生販業者の姿勢を問うたアンチテーゼだった。

 開宴後は毎回、揃えた焼酎をすべてブレンドし前割りしたものを楽しむ。今回は17蔵の焼酎を合わせ6日前に前割りし、いつもと同様、温めて供した。準備を担った今村忠男さんは、そうすることで内臓を司る「太陽神経叢(たいようしんけいそう)」の働きが良くなると話した。それに「心と胃袋を温めると健康で幸せになる」。

 いもづるの会鮫島会長は「17蔵ずつだと7年かかる」と鹿児島の焼酎蔵が113もある、その多様性を指摘するとともに、「(昔ながらの職人集団)黒瀬杜氏は5、6人、阿多杜氏は1人しかいないが後継者の育成に取り組んでいる」と造り手の現状に触れ「熱意や想いを感じてほしい」と話した。

 県酒造組合の田中高逸副会長は「本格焼酎は今が旬。新酒が芳ばしく甘い香りを漂わせ出番を待っている。そのなかで有機野菜を使った料理、前割りの本格焼酎を黒ぢょかで楽しむ会の開催は伝統文化の維持向上の面でも意義深い」と語った。組合が行った本格焼酎の日の一斉乾杯イベントで1万人を目指し「6396人」だった結果なども報告。愛飲層のすそ野の広がりを実感しながらも飲酒人口の減少、さらには「成熟した本格焼酎市場のなかで激化する競争」という逆風もあり、「需要拡大への協力」を呼びかけた。

 宴は文化を尊び酒縁を深める機会。4つのルールがある。①禁煙②一定時間着席③携帯マナーモード④食事・飲酒のマナーをわきまえる。特に「離席は主催者の指示があるまで厳禁」。食そっちのけの宴会が多いなか、有難く頂く運営を貫いている。