さつま焼酎列車

2015年12月10日

 【鹿児島】“さつま焼酎電車”はテーブルやイスを据え付けた、鹿児島市交通局の特別仕様・路面電車で1両定員24人。JRに隣接する鹿児島中央駅前・電停発着で約2時間にわたり、市街地をめぐる車両内では焼酎に合う折詰めのつまみとともに県産焼酎が飲み放題。夜景も肴に、クイズや抽選でも盛り上げる。普段は通勤通学や観光客の足となっている市電が、夢の空間へと生まれ変わる。

 運営はMBCアドバタイジング(鹿児島市)。市内のホテル4社が協賛し参加券付き宿泊プランを提案するなど告知誘客に寄与した。さつま揚げの名店「玖子貴」(きゅうじき=本社・鹿児島県日置市)は同店商品を提供した。

 主催の「薩摩本格芋焼酎生産者協議会」は南九州酒販と県内焼酎メーカー14社で組織。焼酎電車には毎回、南九州酒販の社員と蔵元2社の関係者が乗り込んで参加者をもてなす。<協議会蔵元メンバー(焼酎電車同乗順)=▽小正醸造▽大海酒造▽小鹿酒造▽三岳酒造▽山元酒造▽オガタマ酒造▽田崎酒造▽白金酒造▽若潮酒造▽長島研醸▽さつま無双▽日當山醸造▽大口酒造▽指宿酒造>

 11月27日の焼酎電車には、南九州酒販から竹下幸男・取締役営業本部長をはじめとする社員、蔵元関係者は「白金乃露」白金酒造(姶良市)の塚田英志さん、「薩摩七夕」田崎酒造(いちき串木野市)の田添憲昭さんが法被着用で同乗。盛り上げにはベテランガイド蔵元ルミさんが欠かせない。7日間を通じ参加者を心地よく酔わせた。

 主催関係者は交通局車庫で準備を整え出発。18時30分、鹿児島中央駅前電停で定員参加者を迎えた。きらめく車両に乗り込むと感嘆の声を上げたり記念撮影をしたり。異空間で増す興奮は動き出すとなおさら。特別な場所で焼酎を飲む贅沢感もあるようだ。椅子は固定式で個々人のスペースが確保され、焼酎のサービスは南九州酒販や蔵元関係者が好みの焼酎や飲み方を聞きながら精力的に行った。

 協議会の統一ブランド芋焼酎「恋する焼チュウ」「アイスなお酒」はフルラインで提供。ともに女性層へのアプローチを目指し企画開発したもので、アルコール度数は12度。恋する焼チュウは、原料芋に紅・カロチン系の芋を使用。ピンクボトルに独特のイラストで引きつける。アイスなお酒も、そのままやオンザロックで飲むスタイルを提案。こちらは白熊やペンギンが焼酎を愉しむイラストがゆるくてユーモラスだ。

 蔵元紹介では、白金酒造塚田さんが同社が鹿児島県で最も古い焼酎蔵で西郷さんも飲んだ焼酎であることや磨き芋仕込みについて、田崎酒造田添さんは鹿児島県出身の横綱の名を酒銘とした芋焼酎「薩摩の横綱『西ノ海』」をアピールした。

 クイズでは地理的表示「薩摩」の統一ロゴマークに関する問題も。薩摩焼酎は県産芋を使い県内で製造された本格芋焼酎で、産地ブランドとして世界的に保護されている。ロゴのデザインは「黒ぢょか」が正解。焼酎に含まれる糖質は何%?。正解「0%」は意外だったようだ。正解者には蔵元の手拭い、タオルなどが進呈され、焼酎グラスなどが当たる抽選でも沸いた。

 女性グループで参加した東京・広島・中国北京出身のマユミさん・カオリさん・ティンさんは「これがただとは凄い。本当に楽しかったし皆にお薦めしたい」と大満足の様子。SNSで情報発信したいとも話した。

 ガイドの蔵元さんは随所に方言を入れ笑わせた。「チンチンボッボッイキモソカイ」の意味は「もうそろそろ行きましょう」。これも鹿児島、焼酎も鹿児島。別れが名残惜しいほど焼酎で友だちに、一つになり、さらに夜のまちへと繰り出す火付けにもなったようだ。

 お土産として焼酎とともに、南九州酒販の「鹿児島の焼酎検索サイト」を紹介するカード、糖質・プリン体ゼロで本格焼酎は“女性の味方”だと啓発する漫画チラシも配った。