鷹正宗、会社設立80周年の会

2015年12月04日

 【福岡】焼酎・清酒メーカーの鷹正宗㈱(佐藤司社長、久留米市大善寺町)が会社設立80周年を迎え11月11日、久留米市のハイネスホテル久留米で記念式典があった。節目にあたり今後の事業展開について所信が表明され、地元での販売拡大へ向け一層の支援も訴えた。

 同社は江戸天保年間に創業、昭和10(1935)年11月会社設立した。2008年、コカ・コーラウエストホールディングスの子会社だった同社を酒類卸の㈱原武商店(久留米市)が買収し今日に至る。主力商品は麦焼酎メインにパック「めちゃうま」シリーズ、量り売り「ごりょんさん」など。清酒は「鷹正宗」「トップテン」など展開。2014年度(1―12月)売上高は40億5100万円。出荷量は4万8500石、うち焼酎4万4000石(構成比91%)、清酒4500石(同9%)。焼酎出荷量の44%を独自展開の「量り売り」が占める。M&Aで子会社化した焼酎製造会社「叡醂酒造㈱(えいりんしゅぞう)」(久留米市田主丸町)が今年4月から稼働。未納税移入主体から自醸主体へと大きく舵を切っている。

 式典は「お客様にいちばん近い酒造会社を目指して」とのメッセージを掲げ開催。取引金融機関や県内酒類流通業者をはじめ、飲食店関係者も多数招待され約200人が新たな門出を祝った。

 「鷹正宗」は日本一になった福岡ソフトバンクホークス公認酒。菰樽が並ぶ祝いのステージで同社原武康弘会長が「当社は新たな試みとチャレンジをしようとしている」と宣言。「来年から“鷹正宗会”と称した会員制のお客様の会を立ち上げようと考えている」と明かした。原料や製造にも言及。「地元JAの協力で素晴らしい麦を作っていただいているので、来年には今までにない風味と香りを持った焼酎が出来上がると期待している」「この10数年間、あまり品評会・鑑評会に出品していなかったが、80年を期し出品した当社焼酎が、福岡県酒造組合と福岡国税局主催の鑑評会で金賞を獲ることが出来た。『めちゃうま麦』はパック焼酎で、そのような焼酎を出品する蔵元は珍しいということだったが(県鑑評会では)金賞で嬉しく思った」と話した。<平成27年鑑評会での受賞歴=「福岡県酒類鑑評会」(主催・福岡県酒造組合、市販酒対象)本格焼酎・麦焼酎の部「金賞」▽ごりょんさん 徳利=鷹正宗▽ばっかい=同▽めちゃうま麦=同、「酒類鑑評会」(主催・福岡国税局)本格焼酎の部「金賞」▽ばっかい=叡醂酒造>

 販売については「福岡県には6000店ほどお酒の販売場があるが、その2割の店頭にも無いのではないか。清酒と焼酎を合わせた生産量では県内メーカーでトップだが、販売量トップに結びついていない。そのギャップを埋めるよう頑張っていきたい。また当地久留米には2000軒以上、お酒を取り扱っている料飲店があり、その料飲店さんに『久留米で一番美味しかのは鷹正宗たい、一番売れているのは鷹正宗たい』と言っていただける、そんなお酒を造り御案内させていただきたい」と語り地元での拡販へ意欲を示した。

 佐藤社長(66)は“これからの鷹正宗の歩み”と題したプレゼンで、少子高齢化のなか飛躍していく決意を示した。「恐ろしいデータ」と紹介したのが本格焼酎の飲用比率。「50歳以上の人が全体飲用の70%以上を占め、一番飲める20・30・40代が30%ない。アルコール市場を支えてきた団塊の世代がお酒が飲めない時代が近づいている」。価値観の変化で若年層が通信媒体への出費を増やし、酒がコミュニケーションツールになっていないことも指摘した。

 “兄弟会社”リラックス店舗での販売の様子も伝えた。「鷹がお客様のため、社員のため飛び続けるために」として掲げたのが「焼酎の3?ボックス容器商品」や「発泡系RTD商品」の開発、ネット販売の検討など。焼酎製造に関しては「来年は3万石、5400?を製造すると意気込んでいるし、県鑑評会では県知事賞・県議会議長賞を、局鑑評会では大賞を獲るべく研さん努力している」と語り、減圧蒸留専用機の常圧蒸留兼用機への改造予定も明かした。

 祝辞を述べた西日本シティ銀行・谷川浩道頭取は「清酒メーカーが昭和45年には3533社あったものが、平成5年には2386社に、平成25年には1652社になった。同社は平成4年に焼酎へ舵を切り会社存亡の危機を脱した。量り売りという独特のスタイルで優位性があり焼酎の売上高は全国15位となっている」と業容拡大を評価。叡醂酒造買収については「自醸比率を高め製造コストの安定化、製造の主体的管理を実現し自由な商品づくりを可能にしている」と事業への大きな寄与を指摘した。さらに「天保年間に創業した酒蔵が時代の大きな荒波を越え、今日“原武グループ”のなかで新たなステージへと進化を続けている。地方銀行の最大の使命は、チャレンジする地元企業を積極的に支援しその成長を通じて地域経済の発展に寄与すること。鑑評会で自社で造った焼酎の品質が認められ、今後、久留米産麦の作付拡大も期待され地元への貢献にもつながるだろう。輸出も積極的に行い、韓国のほか中国への輸出も開始し、ベトナム、インドネシアなどアジア諸国、さらにはアメリカへの展開も計画している。川上から川下までの一貫体制、原武グループのチャレンジは久留米及び筑後の将来にとって明るい材料を提供するもので、これまでの歴史・伝統を基に一層進化し、久留米ブランドのお酒を全国へ、さらに世界へと広げていくことを期待する」と話した。

 出席者には記念品として、九州産「はるしずく」100%使用の本格麦焼酎44度などが贈られた。