柿渋・カキタンニン研究会講演会

2015年11月11日

 【京都】柿渋・カキタンニン研究会講演会が「柿渋の未来を拓く」生産と利用の拡大への歩みと題して、10月27日精華町交流ホールで、京都府平成27年度地域力活性プロジェクト事業の支援を受けて開催された。

 今回は?柿の甘渋と新品種の育成(京都大学大学院農学研究科付属農場北島宣教授)、?原料柿の大量生産目指した養液栽培技術の応用(京都府立大学大学院生命環境科学研究科寺林敏教授)、?南山城における柿渋づくりの歴史をたずねて(府立丹後郷土資料館横出洋二資料課長)、?柿渋の魅力と将来性(鹿児島大学松尾友明名誉教授)の講演が行われた。

 日本の三大柿渋産地の一つ京都山城の「天王柿」の柿渋は渋味成分が多く、渋柿原料として高品質の評価を受けて栽培されている。用途は工業分野の塗料、染料から、食品分野の清酒、みりん、醤油などの清澄剤として、また現在は改良を重ねて、健康食品、化粧品、消臭剤、抗菌効果などへと新たな需要が開発されてきている。

 講演の中で、松尾教授は「渋柿には多くのポリフェノール成分が含まれており、特に、果実には2%から10%を超えるタンニン(高分子ポリフェノールの一種)が含まれていて、無色透明で、無臭で、特性として、たんばく質や重金属と強く結合して沈殿を生じる。また、強い還元力を持ち、酸化を防止したり、変色や異臭の発生を抑制し、さらに、消臭作用や抗ウイルス作用・静菌作用を示す。和紙や布・木材等に塗布後、乾燥させると撥水・防水効果が強くなる。加えて、動脈硬化症、高血圧症や糖尿病の軽減に関する生理的機能性に関しても多くの科学的報告が発表されている。現在は伝統的な製法に加えて、様々な科学的工夫が加えられて多種多用な柿渋が製造して利用されている。カキタンニンや柿渋を利用した新たなる分野での製品開発、新規事業の創出につながる。そのためには原料素材の高品質化と安定供給、柿渋のブランド化、用途別の品質基準の設定が今後必須となってくる」などと語った。