大分県、消費者対象酒会、若手焼酎マイスター

2015年09月14日

 【大分】蔵元が喜びを感じるのは、鑑評会やコンテストでの受賞や商品の大ヒットばかりでは無い。じわっと込み上げてくるものが大きいのは飲み手に愛されていると実感する時。地元の人の愛飲ならなおさらだ。いわば地の酒の真骨頂。そんな場面に出くわすと酒がとても幸せそうに見える。

 「大分県内5軒の焼酎蔵が丹誠込めて手造りしたこだわりの”大分麦焼酎”をおいしい料理や会話とともに心ゆくまでお楽しみください」――。大分県内の蔵元と酒販店が連携し開催する「若手焼酎マイスターの会」は、地元の人へ地の焼酎の魅力を発信する年1回開催、会費制の酒会だ。主役は蔵元だとして裏方に徹する酒屋だが、その熱意たるや半端じゃない。地の酒を光らせる奮闘。魅力を伝える橋渡し役を、地元の酒販店がけん引する意義は大きい。

 今年は第9回。8月21日、大分市の大分オアシスタワーホテルで開かれ定員いっぱい120人の参加で沸き立った。主催・実行委のメンバーは県内の蔵元5社と酒販店4店(敬称略)。蔵元=▽「泰明」藤居醸造・藤居淳一郎(豊後大野市)▽「常徳屋」常徳屋酒造場・中園誠(宇佐市)▽「久保」久保酒蔵・久保雅彦(宇佐市)▽「杜谷」ぶんご銘醸・狩生孝之(佐伯市)▽「牟禮鶴」牟礼鶴酒造・森健太郎(豊後大野市)。酒販店=▽田染荘<たしぶのしょう>・津田紀芳(豊後高田市)▽大平酒店・大平隆史(大分市)▽丸田酒舗・丸田俊和(大分市)▽リカーマート塩月・塩月昇吾(佐伯市)。告知ポスターや当日配付の出品商品紹介冊子で「協賛」として5蔵の焼酎が飲める飲食店を紹介した。

 開宴に先立つ主催者代表あいさつで久保酒蔵・久保さんは「9回目を迎えることが出来たのは皆様方の応援があってのことと大変感謝しています。今回も色々な焼酎、飲み方提案を準備していますので是非すべてのブースを回りお気に入りを見つけていただきたい」と話した。

 会では「とりあえず前割りで!乾杯!」が始まりの決まり。最初の一杯を地元麦焼酎の前割りで、という提案だ。この日のために各蔵の前割焼酎を詰めたオリジナルラベルの専用ボトルが用意された。

 蔵元ブースでは20種ほどの商品をPR。全種を試す人もいて、こだわりの原料や造りについて造り手自ら熱く語った。蔵元の妻のPRも冴え渡る。貯蔵ビンテージの提案や”初ものかぼす”を添えた地サイダー割り、コーヒー豆を漬けたものなども登場。地元でありながら初めて出会った焼酎も多々あったようで、新たな魅力発見に感動する姿が各ブースで見られ、「いいウイスキー以上、凄くなめらか」などの声も聞かれた。鰈(かれい)の南蛮漬けや大分名物唐揚げ、ホルモンと野菜のホイル焼き、ローストポークの柚子胡椒風味などの料理は蔵元がリクエストしたもので、焼酎の美味さを引き立てた。

 被災等への義援金として寄付するためのオークションも続けている。今回は非売の原酒5蔵セットを出品。落札者は会の感想を一言「こんなに美味しい焼酎を有難う」。会場に居合わせた人を一つにしたのが、リカーマート塩月・塩月さんのライブ。自作の歌「若手焼酎マイスターのテーマ」を熱唱した。「小さな蔵だけどこだわりはハンパ無いぜ」「大事に育て上げた子供のような焼酎さ」「大分の誇りさ」…。歌詞に込めた想いは、地元の酒を伝える喜び、そんな酒屋の商いを続ける糧とも重なる。

 今回は各蔵の焼酎を詰めたミニチュアボトル5本セットが参加者全員にプレゼントされた。閉会にあたり藤居醸造・藤居さんが「我々が造っている焼酎は、ジャパニーズ・スピリッツ。日本人の精神、魂だと思っている。伝統を守りつつ、常に向上心を持ってこれからも美味しい焼酎造りに努力して参りたい」と賭ける想いを言葉にした。

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 参加者へのアンケートでは、地元の焼酎への関心や愛飲気運の高まりも垣間見えるようになった。

 若手焼酎マイスターの会では毎年、飲食店向け「試飲会」も開催している。また草の根活動でファンづくりにつなげているのが「豊後麦酎団(ぶんごばくちゅうだん)」。マイスターの会蔵元に、以下大分県内の蔵元7社=▽四ッ谷酒造▽三和酒類▽藤居酒造▽八鹿酒造▽みろく酒造▽久家本店▽萱島酒類――を加えた12社がメンバーで、2カ月に1度、蔵元と交流する楽しむ会(第一部・焼酎の勉強会、第二部・懇親会)を開催している。小規模の酒会で、価値や魅力を伝える活動を続けている。
 今回の会同様、料理は一切残さない。酒会運営で光る一面だ。