百年間熟成酒の会 深山の穴倉に眠る日本酒

2011年09月27日

 【福岡】時を抱く日本酒の古酒。山深い八女市黒木町大淵の、とある穴倉に酒が眠っている。年を重ねるごとに深みを増す、その表情に触れる「百年間熟成酒の会」が9月11日、同市であった。開催は年1回。毎年、百年間にわたり続け、古酒に寄り添い楽しもうというものだ。

 発案は、「はらぐち酒店」(北九州市戸畑区)の原口修一さん。飲食店関係者と共に、日本酒の蔵元、高橋商店(「繁桝(しげます)」醸造元=創業享保2<1717>年、高橋信郎社長、八女市)を見学した際、「冷蔵庫が無い時代には、酒を山に持っていって貯蔵した」という話を聞き、当時のようなことが再現できればと思った。蔵元も同意し、かつて使っていた同じ穴倉に、平成4年4月28日、平成3酒造年度に醸造した大吟醸酒、生々を含め1升びん112本を納めた。

 今年の会に集まったのは、原口さん、同業の酒販店「酒のたむら」(北九州市門司区)の戸成益典さん、両店得意先の料飲店関係者やお客さん、日本酒愛好家ら10人ほど。蔵元の高橋社長と共に一行は、蔵元から現地へと向かった。

 同じ八女市とはいえ車で約40分、期待が膨らむ。「運良く参加できて良かった。本当に楽しみ」と初参加の橋爪聖仁さん(久留米市在住)。名刺には“日本酒に一生を捧げるために会社を辞めた男”とあり、日本酒文化普及協会会長。未知の日本酒との出会いに、心浮き立つ。橋爪さんと同行の森岡雅勝さんは東京からやって来た。「想像以上に山奥で感動した」。

 車を止め、山林へと分け入り、倒木や草むらを乗り越え、穴倉へと登りつめた。入口にすき間なく積まれた石を外すと、広さ1・5坪(3畳)、高さ1・5mほどの穴倉が現れた。湿度は90%にはなろう、とのこと。気温は年間を通じ6―12度と安定している。当日は12度だった。

 穴倉は、蔵元の蔵置所として認められ、平成4年以降、貯蔵用に720mlびん詰品なども追加補充してきた。在庫は1升びん換算で140本ほど。最初に納めた平成3酒造年度醸造・大吟醸をはじめ、15年度の純米吟醸、16年度大吟生々などが取り出されると、参加女性の声が弾んだ。「早く飲みたいね」。

 古酒は持ち帰り、蔵元近く、八女市内の飲食店で開封。料理と合わせ、古酒ならではの味わいを堪のうした。今年2月に詰め夏を越した吟醸との比較も楽しんだ。機会あるたびに酒造りの現場を訪ねる、活魚・季節料理店「味処板くら」(北九州市小倉北区)の板倉建さんは、店では古酒を珍味と合わせ出しているという。参加者の一人は、「角が取れ、何ともやわらかい」と古酒の魅力を語った。

 百年間熟成酒の会は今年、節目の20周年を迎えた。「震災や原発事故などが起こる中、先人達の知恵を生かす、そうしたことをあらためて考えてみたかった」と原口さん。「自然環境の中でお酒がどう変化していくのかを知ることで、酒造りそのものが自然と共にあることを忘れず、自然の偉大さや恵み、有難さを感じる機会になれば。会が百年続くよう、次の世代へ伝えていきたい」と話す。